(書評)イン・ザ・ダーク

著者:前川裕



金沢の高級旅館で、大手企業の女性課長が殺害された。その頃、都内でも高級デリヘル嬢が殺される、という事件が立て続けに起きていた。都内の事件を追う刑事・法然は、相棒である安中と共にその事件の捜査を行うのだが……
うーん……わからん……
物語は、警視庁の刑事で、本来は生活安全課の捜査員として、吉原周辺の風俗などを担当している法然、安中の視点で綴られる。立て続けに起こるデリヘル嬢殺害事件。そのデリヘル嬢は、皆、大手企業に勤めている、ということが売りとなっている女性。そして、そんな彼女らを結びつけるのは、金沢で殺害された女性・大友雪江……
雪江の叔父は、かつて、殺人事件を起こした人物で、それ故に、彼女の母は、夫(殺人犯の兄)を攻め続けていた。そして、そのことで、彼女と母、そして、兄との仲も悪くなっていた。母に憎まれた父への謝罪の気持ちなのか、自らを攻め続け、売春行為を続けていた雪江。その真意は? そして、そんな彼女を殺した犯人は?
そんなところがテーマであり、その暗い願望とか、「こういう流れなのですよ」という説明そのものはすっと理解できる。できるのだけど、じゃあ、なぜそこまで彼女は自らを攻め続けたのか? さらに、そんな彼女を殺害した連続殺人犯の気持ち、というのも……。言葉面では理解できた。でも気持ちは全く理解できない。そんなところに達してしまうのだ。
もっとも、著者は、そういうものも含めて、人間の感情、(性的)嗜好というのは他者には理解できないのだ、というようなメッセージを含めたのではないか? という気はする。というのは、主人公である法然は、しばしば、部下である安中を自宅に呼ぶのだが、そこで自分の妻と安中が仲良くしているのを見て嫉妬を感じつつも同時に興奮している、なんていうシーンなどもあるため。これだって、ちょっと考えれば結構、倒錯した性癖と言えよう。法然自身、これはどういう感情なのだ? と一瞬、思いつつ、しかし、それを受け入れている。それって、一歩を踏み出している、という風にも捉えられるように思う。
以前に読んだ、『死屍累々の夜』あたりもそうなのだが、人間の感情は結局、他人には、完全に理解できない。そんなテーマ性を押し出しているのかな? と思わずにはいられない。

No.3805

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