(書評)すずらん通り ベルサイユ書房

著者:七尾与史



ミステリ作家を目指す青年・日比谷研介。生活の糧としていたバイト先の古書店が潰れてしまい、新たにバイト先として選んだのは、神保町すずらん通りにある新刊本の書店「ベルサイユ書房」。そこは、男装の麗人である剣崎店長を始め、カリスマポップ職人の美月など、個性的な店員が集う店だった。そして、そんな店では次々と不可思議な事件が発生して……
なんか、こういう風に書くと、大崎梢氏の「成風堂書店」シリーズっぽい印象を持つと思う。というか、自分自身が「そういう感じの作品かな?」という思いを抱いて読み始めた。……ら、かなり違った(笑) というか、連作短編かとすら思っていたし(ぉぃ)
冒頭に「次々と不可思議な事件が発生して……」と書いたのだが、実際、物語としては連作短編としても十分に出来る要素を持っていると思う。
とは言え、物語の中心となるのは、美月が中心となって書くポップの存在。
書店で、その内容、魅力を凝縮し、客に伝えるメッセージといえるポップ。作品の内容を的確に指摘し、かつ、それを伝えるのは至難の業といえる。そんなポップがなぜか盗まれてしまう、という事件。さらには、そのポップを用いての脅迫事件。この辺りが中心となり、しかし、他にも古書店に次々と置かれる、梶井基次郎作品を髣髴とさせるレモンやら、未解決の殺人事件とミステリ小説……など、色々な事例が表れ、そして、それが同時多発的に起こり、解決されていく。短編作品でやっても良いのに、と思うそれを長編でやるのは著者らしさなのかな? と思う。確かに、これを別々にやったら、それぞれのエピソードでカラーの違いがあって……とかになりそうだし。それをまとめて、というのは、この形がベストなんだろう、という気がする。
そんな中で、個人語りをするなら、やっぱりポップの存在。正直、自分自身、これでヒットさせる技量って凄いな、と思う。手前味噌な話をすると、実は私自身、出版社による読者モニターとかは結構やっていて、何作かは帯などにコメントが掲載された経験もある。でも、その掲載された箇所は自分が意図した部分とは違っていたり、っていうが多かったりする(読書モニターとして、提出する文字数は、数百文字、しかし、実際に使われるのは数文字程度) そういうとき、「載ったのはいいけど、そこかいな……」っていう気分になるのだ。編集者の目で見れば、とか、そういうのも含めてセンスというのを思わずにはいられなかった。
まぁ、作品の大きな要素を占めるレモンの意味。この辺りは肩透かし気味だったのだけど、でも、残虐な事件から日常の謎まで、渾然一体で一本の作品にする著者の腕は十分にわかった。

No.3808

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  • すずらん通り ベルサイユ書房 ≪あらすじ≫ ミステリ作家を目指す日比谷研介は神保町すずらん通りの「ベルサイユ書房」でアルバイトを始めた。そこは男装の麗人・剣崎瑠璃子店長、“カリスマポップ職人”の美月美玲など、濃いキャラの書店員ばかりが働いていた。しかも穏やかなバイト生活と思っていた研介の前で、次々と不可思議な事件が発生し…。気鋭のミステリ作家が贈る破天荒にして新たなる書店...
  • 2015.09.19 (Sat) 00:41 | 刹那的虹色世界