（書評）岩窟姫

著者：近藤史恵



人気絶頂のアイドルであり、妹のように思っていた沙霧が自殺した。そして、その余波は、蓮美の元にも……。沙霧の残した裏ブログには、自分にいじめられていた、ということが綴られていたからだ。疑いの目で見るマネージャー、自分を批判するファンたち。そのような中、蓮美は外出することが出来なくなってしまった。それから半年、沙霧の死の真相を求め、調査を開始する……
うーん……
どんどん読み進めることが出来るのは間違いない。自分は沙霧を苛めたりしていない。むしろ、仲がよかったくらい。なのに、なぜ自分を誹謗するような日記を残して自殺したのか？　ブログに残された写真は確かに、沙霧がいた場所に違いなさそう。となると？　そして、調査を進める中、何者かの妨害が……
テンポの良い展開。そして、その中での周囲の蓮美に向ける視線。芸能人に対し、何の見返りもなく応援するが、同時に理由なく応援しなくなる権利も持ったファンという存在。さらには、水着だのグラビアだのという露出を求めながらも、なぜか処女性も求める。一方で、所属する芸能人をあくまでも「商品」としてドライに扱う事務所の人間。その中での葛藤というのも伝わってくる。その辺りは非常に面白く読み進めることが出来た。そして、最後に構図がひっくり返る、という結末も。
ただ……じゃあ、物語の真相は……というと、ちょっと無理があるかなぁ？　と。
事務所の中で行われていた行為。それだけ大々的に行っていて、そんなにバレないものだろうか？
さらに、妨害者は金も権力も持っている……って、そんな存在が、そこまであからさまに犯罪行為をしたら（放火とかしているわけだし）、むしろ、そっちから自分の身が危なくなるんじゃなかろうか？　それに、一応、公開されたブログに隠された暗号にしても、それほど難しい暗号ではないだけにすぐにバレるのではないかと思うのだが……
読ませるのは確かだけど、何かスッキリしない感じも残った。

Ｎｏ．３８１５


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