(書評)「昔はよかった」病

著者:パオロ・マッツァリーノ



「昔はよかったね」 そういって今を嘆き、昔を懐かしむ。昔は安全だったのに、地域の絆があったのに……。しかし、それは捏造された記憶、もしくは新しいものを否定する年長者のボヤキに過ぎない。資料を基に、そんな風潮をシニカルに斬る書。
著者は、WEBサイトの反社会学講座などで知られており、勿論、自分自身もそれを読んだことはあるのだけど、実は書籍の形で著者の文章を読むのは初めてだったりする。うん、WEBサイトのときと芸風(敢えてこう言う)が変わっていなかった(笑)
本書は、雑誌『新潮45』で連載されたものをまとめたもので、13のトピックスについて綴られている。
まぁ、犯罪とか、モラルとか、その辺りについては、過去にもこの手の話題の書を読んだことがあるので、大体、知っていることをおさらいしているような感じだったのだけど(ただ、こうやって何度もそれをやっても、昔はよかった、とデータなどから完全に否定される風説が流布されることは問題だと思うが)、「火の用心」の話、コーラとウーロン茶の話、ハイテンションあたりが印象的。
ハイテンションについては……本書で指摘されているのと全く同じ誤訳で文章を自分でも書いていました(笑) やけに元気が良い、とか、明るい、とかそういうような意味で使われることが多いこの言葉。しかし、本来、「テンション」というのは緊張という意味であり、国家間紛争が起きそうなときに「テンション高っ!」とか言うほうが正しいはず、というのは目から鱗だった。そして、そんなやり取りの中から、今度は日本における「ハイテンション」の使われ方の変遷などが綴られる。当初は、本来の意味で使われていたものだけど(例えば、労使抗争とか、学生運動などが起きて国内での緊張関係が強かったため、テンションの高い状態、なんていうのは正しい用法だもの)、その中から少しずつ別の側面が強調され、そして、曲名とか、そういうので完全に別の意味に切り替わってしまった。なんか、この流れ、「ニート」とか、そういうものにも通じるところが感じられ興味深かった。
かなり砕けた文章だし、また、時事ネタ的なネタを入れたりしているので好き嫌いは出ると思うけど、私は好きだ。

No.3816

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