(書評)サイレントステップ

著者:本城雅人



デビューから3年。順調に成績を上げてきた若手騎手の小山和輝は、騎手になって以来、世話になってきた五井厩舎を離れ、リーディングトップを独走する塚本厩舎へと移籍した。ベテラントップジョッキーである平賀をエースとして配する塚本厩舎に移籍する理由はただ一つ。かつて、塚本厩舎の2番手騎手であり、レース中の事故で死亡した父の、その死の理由を探ること……
競馬雑誌『週刊ギャロップ』に連載されていた作品。父の死の謎を、という意味ではミステリ作品なのだけど、どちらかと言うと、厩舎での、そして若手騎手の日々というものを主に描いた作品のように感じた。
物語の中心にいるのは、冒頭にも来たベテラントップジョッキーの平賀。亡き父より1つ年上の兄弟子で、父が死んだレースで、その馬の騎乗を断った存在でもある。平賀の言動は確かに怪しいところがある。レースで勝利をあげる、というためには何でもするタイプで、レース中に嫌がらせのような行為も行ってくる。しかし、騎乗技術などは超一流で、他の誰もが気付かなかった些細な馬の変調すら見抜いたことが何度もある。そんな平賀が、父の乗った馬をいきなり手放すだろうか? むしろ、故障することがわかっていて、馬を譲ったのではないか? そんな疑惑がどうしても付きまとう。しかし、確かに、嫌がらせのようなこともされたが、しかし、的確な一言などで和輝自身の技術も進歩しているのも確か。そんな悪人とも思えない……。そして、そのような中で発見した平賀の抱えた秘密……
そんな要素というのは確かに根底にあるし、物語を読み進めるための推進力なのは間違いない。
でも、その一方で、和輝自身がまだまだ未熟な騎手として苦労する話であったり、はたまた、同期の騎手や、ベテラン厩務員との交流だったり、なんていうのも溢れていて、そこまで謎だけで、という感じはしないのだ。むしろ、青春小説的な味を持っている。だから、間違いなく「競馬ミステリ」なのだけど、純粋に競馬小説と言う側面を持っているといえると思う。
真相については一応、ひっくり返しにはなっているのだけど、その前の推理とかは、直前に露骨なヒントが出て……でのものなのでちょっと弱いかな? と言う感じはする。また、平賀の秘密についても、先入観が目くらましになっているのかもしれないけど、何度も何度も争う機会があるライバル騎手とかが気付かない、っていうことがあるのだろうか? なんていうのは感じたりした。
それらを加味すると、ミステリというよりも、競馬小説という比率が高い作品なのかな、と言う風に感じる。

No.3818

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