(書評)ヒポクラテスの誓い

著者:中山七里



「あなた、死体は好き?」 単位が足らず、法医学研究室へと飛ばされてきた研修医の栂野真琴。そんな真琴に、研究室准教授であるキャシーは尋ねる。傲岸不遜だが、解剖に対する熱意は並々ならぬ法医学の権威・光崎。そして、「死体好き」なキャシーと共に、事件に臨むうち、真琴自身も法医学の魅力を知っていって……
という連作短編集。
法医学とか、そういう科学的な内容を扱った作品ってある意味、凄く難しいものだと感じる。というのは、法医学によって解剖し、その結果を知る。このこと自体が事件の真相解明の大きなヒントそのものになってしまうため。そのため、それを中心に物語を組み立てるとなると、解剖した結果、奇妙な状況が発見され、それがどうやっておきたのか? というのを探る形。もしくは、その解剖までのいざこざを描くという形。本書は、後者の側に入るだろう。
例えば、1編目。冬、川へと転落して死亡したと思われる会社社長。一緒に飲んでいたという証人も存在し、酩酊状態だったという。しかし、それは本当に酒によっての事故だったのか? 身なりと手にしていた酒のチグハグさ。そして、解剖しては、体調の関係から、それほど飲むことが出来ず、しかも、アルコールの状況も……。これが判明した時点で犯人は絞られる。でも、それが大事、ということはよくわかる。
2編目はさらに、それがハッキリと。自転車に乗っていた女性を撥ねて死亡させた。しかし、加害者の身内は、絶対にそのような危険な運転をしていたはずがないという。しかし、女性は長年の病から回復するなど自殺の兆候はない。それを解剖すると……
さらには真琴の友の死と、それを解剖しようと言う光崎らとの対立とか、真琴自身の成長。その一方で、強引と言えるやり方で解剖をしようとする光崎の真意。そういうものが見え隠れしていって、謎解きというよりは、解剖そのものを巡っての人間関係、駆け引きなどの部分がどんどん光ってくる。正直、光崎の真意については、結構、肩透かし気味なところはあったのだけど、でも、そこに至るまでが面白かったのでそれでいいのかな? とも。
ひっくり返しが求められているような著者だけど、こういう作品、私は十分にアリだと思う。

No.3823

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  • ピポクラテスの誓い 作:中山 千里 発行元(出版):祥伝社 ≪あらすじ≫ 浦和医大・法医学教室に「試用期間」として入った研修医の栂野真琴。彼女を出迎えたのは偏屈者の法医学の権威、光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。凍死や事故死など、一見、事件性のない遺体を強引に解剖する光崎。「既往症のある遺体が出たら教えろ」と実は刑事に指示していたがその真意と...
  • 2016.08.30 (Tue) 20:43 | 刹那的虹色世界