(書評)海のイカロス

著者:大門剛明



東日本大震災の結果もあり、クリーンエネルギーへの注目が集まる日本。瀬戸内海で潮流発電についての研究を続ける正岡周平の夢は、地元企業からの出資もあり、実現しようとしていた。しかし、そこで知ったのは、自らを潮流発電の研究へと導いてくれ、その志半ばで自殺した思い人・七海の死の真相。正岡は、共同開発企業の代表・羽藤の殺害を画策し……
物語は、殺人を犯す側(犯した側)の正岡と、そんな正岡に疑惑を抱くことになる弁護士・真壁明日菜の視点で綴られる。
自分をその世界へと導いてくれた想い人・七海への想いを胸に、そして、自らの持つ技術・知識を総動員し、完璧なアリバイを用意しての殺人計画を実行する正岡。そして、そんな正岡の真摯さ。人柄を知り、まさか、と思いつつも、ふとしたところで知った発言などから、少しずつ正岡に対する疑惑を強めていく明日菜。犯人が誰なのかわかっている。そして、ある程度の概要もわかっているという中での倒述ミステリという形になっている。
テンポとか、そういうものはいつも通りよい。だけど……
倒述ミステリで、しかも、完璧といえるような計画で、という作品だと『容疑者Xの献身』(東野圭吾著)のような傑作があるし、最近読んだ倒述ミステリだと大倉崇裕氏の『福家警部補』シリーズとかがある。それらと比べると……というのがどうしても出てしまう。
というのは、まず、追う側と追われる側の駆け引きとか、そういうものが凄く弱い、ということ。疑惑に対し、どう犯人が対応するのかっていうのは倒述モノの見せ場の一つだけど、あまりそういうのがなくバラバラに展開してしまった感じ。また、このトリックなのだけど……うーん……。確かに、完璧な計画と言えば完璧な計画なのだけど……それって、犯罪として成立しているの? という感じになってしまった。
引き込む力はあるのだけど、読み終わるとちょっと「?」というところが目立ってしまったように思う。

No.3825

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