(書評)彼女が捕手になった理由

著者:明日崎幸



左利きのショート・本摩敬一が所属する中学野球チーム「白倉柏シニア」。剛速球だが、ノーコンの投手・司城。俊足だが、肩の弱い中堅手・石井。強打だが、リードの下手な捕手・阿瀬。それぞれ、実力はあるはずなのに、ちぐはぐなためにいつも2回戦くらいで敗退。そんなチームにやって来たのは、名門チームの控え捕手で、なおかつ、女の子である梶原沙月。監督から全権を任された沙月は、チーム内の反発をよそに、大胆なコンバートを断行してチームを変えていって……
うーん……惜しい!! そんな感想を抱いた。
物語の主軸は、まさに王道なスポーツもの、という印象。冒頭に書いたように、個々の才能はあるはずなのに、ちぐはぐなチームを、名門チームからやってきた沙月が改革する。最初は反発も受けるものの、それぞれの特徴をしっかりを把握しての改革を進める沙月の支持はしっかりとチームを強化。次々と試合を勝ち進み、やがて、沙月がかつて所属していた名門チームとの対決に。そこには、沙月がチームを離れる原因となった捕手がいて……
いかにも、少年漫画的な王道展開でしょ?
実際に、ちぐはぐなチームの、そのちぐはぐさが解消されていき、その実力が発揮されていく様は楽しい。また、その結果の決勝戦。成長したナインが、逆に独りよがりに陥っている沙月に喝を入れるとか、いかにも、だけど、だからこその良さが凝縮されている。そういう意味では楽しく読めた。
……では、なぜ、「惜しい!」という感想になったのか? 理由としては2つ。
まず、分量の問題。文庫300頁あまりで、やるにはやっぱり内容が多すぎると感じる。なるべく、完結に、しかし、最小限度の情報で整理しているのはわかるのだけど、それでもそれぞれの葛藤とか、そういうのがもうちょっと掘り下げて欲しかった。特に、阿瀬とかは、「正捕手」の座を奪われて沙月に反発するなら、捕手に対する想いとかあると思う。その辺り、何かあってもよかったと思うから。
もう1つが、設定の部分。個々の能力が高い、というのは良いにしても、主人公の敬一が普段の送球で投げていたのがナックルって、それはないだろ!(笑) 守備の送球でナックルなんて投げられたら捕球できないよ(笑) また、「投げ方がわからない」ってのはともかく、ナックルボールの存在を知らないってことはないだろう、と思うこと。そのあたりにちょっと無理を感じてしまった。
王道の展開。それは全く悪くない。っていうか、凄く良い。それだけに、ちょっとした無理の部分を直して欲しかったなぁ、と思う。

No.3841

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