(書評)忘却のレーテ

著者:法条遥



事故で両親を喪った大学生・笹木唯は、高額な報酬と引き換えに記憶を消去するという新薬・レーテの臨床試験に参加する。外部から完全に隔離された施設で天才科学者の監視の下に過ごす7日間。毎日、記憶を消去される5人の被験者だが、ある日、目が覚めると流血死体を発見して……
読後、もう一度読み直したくなる。ある意味、そんな要素の塊のような作品だな、と感じる。
物語は、臨床試験に臨む、というところから始まって、1日、2日、3日……と日付を刻む形で章分けされて展開される。勿論、毎日、記憶が消去されてしまうので、それぞれ、ある程度、同じような話の流れがあったり、しかし、そこに違和感があったり……。しかも、主人公たる唯が、「死」に対して極端な反応をしてしまう、という特性があるので余計にその違和感が増幅される。
文庫裏表紙の記憶消失ミステリとあるんだけど、主人公の一人称視点での話しなので、謎解きをする、というよりは一種の叙述ミステリ的な要素が強い。正直、毎日、記憶を喪ってしまう、という設定がされているので作中で起きた殺人(?)についてこういうトリックだ、とか、そういうのを自ら予想するのはほぼ不可能と言えるし。
なので、読んでいて頭の中を駆け回っているのは、ただひたすらに積み重なっていく違和感。そして、殺人の真相というよりも、これはこういう構造で作られている物語なのかな? というメタ視点での謎の想像。そして、終盤になっての実験概要の説明により、それを確認した、という感じ。何だかんだ言いながら、なるほどね、というような感想を抱いたし、そういう意味では見事な構成と言えるのだろう。
ただ……言い換えると、主人公に共感した、とか、作中の謎についてそのまま集中して考えることが出来たのか? と問われるとちょっと疑問。著者の作品自体は、書店などの、特にハヤカワ書房のSF作品のコーナーで目にしていたのだけど、こういう設定で読ませるタイプの作家なのかな? というのを思わずにはいられなかった。

No.3845

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