(書評)下ネタという概念が存在しない退屈な世界10

著者:赤城大空



藻女の策謀により、善導課にとらわれてしまった綾女。「公然猥褻症候群」なるさらなる病気をでっち上げ、表現規制を推し進めようとする藻女に対し、狸吉は、残るSOXメンバーの力を借りて、綾女奪還作戦、そして、藻女の野望を挫くための策略を練る。その頃、北の収容所「ヘルサウンド」に収容された綾女は、伝説の下ネタテロリスト・奥間善十郎との邂逅を果たす……
なんだろう、この「熱い」話は!? 相変わらず、地の文が本編と関係のないしょーもない下ネタトークだらけなのに、話そのものが滅茶苦茶熱い展開って、一体何なの、これ?
前巻でもそうなのだけど、藻女も、ある意味、目的は性情報の開放。しかし、歪んだ過去を持つ藻女にとって、それはただちに開放するのではなく、同時に自分のような存在を生んでしまった日本という国を崩壊させたい、という目的も持っている。それは徐々に規制を強め、性知識も性風俗も全てを禁止し、出生率0を続けさせる、というもの。そして、気付いたときには日本は取り返しのつかない状況になり、同時に、性情報などの規制というのも出来ない状況へ……。それが全て成功することこそ、藻女の最大の狙い。
勿論、そのような狙いは狸吉も知っている。だからこそ、それを打ち砕かねばならない。しかし、自分はテロリストであり、少なくとも、日本の多くの人々は政府の規制を、という方針を支持している。そこで、下手に動いても……。その状況を打ち砕くには……藻女の思惑以上に、その政策を推し進め、数十年計画どころか、あっという間にそのおかしさに人々に気付かせれば良い!
なんか、丁度、数日前に、日本の表現を規制したくてしたくて仕方がないカルトな人々に乗せられて、国連の人が「日本の女学生の30%は援助交際をしている! だから、性表現を規制せよ」とか寝ぼけきった公式発表をしたりしたばかりなわけだけどタイミングとして会いすぎて、社会派小説に見えるのはなぜなのだろう? しかも、その為に、これまで出てきた数々の下ネタテロリストとか、そういうのもまとめ挙げていく狸吉らが格好良すぎる。……まぁ、現実の方は、「日本の女学生の30%が援助交際している」とか妄言が語られても言っても、まともにニュースでツッコミすらこない状況なので絶望的なのだけど……(苦笑)
そのような中で、アンナ先輩との話についても大分、収束の気配が見えてきたし、さらに、狸吉と綾女の関係は完全に決着と言う印象。おかしい……なんで、この話で感動した、というような気分になっているのだろう……?
まだ、藻女との決着はついていないのだけど、いよいよ最終決戦という感じで凄く楽しみ。大満足の巻だった。

……と、書いたところで、まさか、この話を読んでいる最中に、アニメ版でアンナ先輩役をされていた松来未祐さんの訃報を聞こうとは思いもしなかった。だって、つい1ヶ月前まで普通に声を聞いていた方ですぜ?
物語自体も面白かったのだけど、それと同じくらい、色々なタイミングが合いすぎて絶対に記憶に残る巻になるだろうと思う。
松来未祐さんのご冥福をお祈りします。

No.3846

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