(書評)僕はもう憑かれたよ

著者:七尾与史



事故で恋人を喪った八木沼真央。死の直前に、恋人が残した「僕は誤診をしたかもしれない」と言う言葉は、ずっと彼女の心に残っていた。その頃、医療器具メーカーの営業マンである美門玲二は、最近、原因不明の体調不良に悩まされていた。疲れを取ろうと早めに寝ても、疲れが取れないどころか、余計に疲労困憊。そんな状況の中、自室に監視カメラを仕掛けると、どうやら、自分の別人格が肉体を動かしているようで……
なんか、普段、自分がこのブログで書いている感想のパターンについて考え直したくなった。
……と書くと、何のこっちゃ、と思うだろう。
いや、本の読みやすさについて、「テンポがいい」「リーダビリティ抜群」というのをよく、並行して書くことが多い。しかし、本書については「リーダビリティは高い」が、「テンポは悪い」という感じになってしまった。
物語は、冒頭に書いたように、真央と美門、という二人の視点で綴られる。そして、スタートは、真央の家に胡散臭い格好、喋りで美門が訪れるところから……。真央は胡散臭さを感じつつも、恋人の死は事故死ではない、という言葉から興味を持って、恋人の死を調べ始める……。
……のだけど、調査をする真央の方は、実際に行われる調査と同じくらいに死んだ恋人との思い出、回想シーンが挟まるためになかなか調査が進展していかない。一方の美門は、最近、妙に疲れやすい、というところから自分が知らないうちに行動をしている……となり、自分はどうしたのかを調べ始める。自分の睡眠後の行動を隠し撮りしたり、はたまた、何かの病気ではないかと精神科へ行ったり……。まぁ、現実的に考えると、美門の行動はそうなるだろう、とは思うものの、読者としては、ちゃんと意思を持って行動しているのが真央視点のパートでハッキリしているし、タイトルなどからその意思が誰のものなのかも予想できる。にも関わらず、他の人格がいる、ということを認めるまでが長いので、どうにもテンポが悪いと感じられてしまった(ついでに言うと、その人格が誰なのか、というのが終盤まで明かされない。予想できるけど、それを言わないのは何かのトリックかと思ったんだけど、そんなことはなかった)
著者の作品は、結構、犯人と被害者の関係性がトリッキーだったりするのだけど、その点で言えば本作はかなりシンプル。そして、その中に、閉鎖空間での人間関係の危うさとか、はたまた、善意が逆に働いたり……というテーマ性は良かった。それだけに、先に書いた欠点をどうにか克服して欲しかったところ。ちょっと勿体無い感じ。

No.3847

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