(書評)犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

著者:雫井脩介



「バッドマン事件」から半年。神奈川県内で、老舗菓子メーカーの社長とその息子が誘拐された。数日後、社長だけが解放され、息子を助けたくば、3000万円を出せ、という犯人からの要求が入る。捜査を任された神奈川県警の警視・巻島は、社長と協力し、事態に当たることのだが、そこには犯人の策略が隠れていて……
傑作と言えるであろう作品、『犯人に告ぐ』から10年を経て、まさかの続編刊行。ただ、今回はどちらかと言うと、警察小説というよりも、警察、犯人、被害者である社長。三者による腹の探りあいという面での面白さが際立っている。というのも、まず、視点が、その3つで綴られる、というのがあるから。
……という以前に、実は前半の200頁くらいについて言えば、巻島ら、警察の話というのは殆どでない。犯人の1人であり、振り込め詐欺の掛け子として活動する知樹。しかし、そのアジトが警察に潜入され、何とか逃げ切った状況。そんなとき、グループの指南役である淡野の手引きで、誘拐という新たな「ビジネス」を開始する。そして、そのターゲットとして選ばれたのが、不祥事により知樹の人生を狂わせるきっかけとなった菓子メーカーの社長……
犯人の一人である知樹の視点で綴られるため、ある程度、犯人側の思惑というのは見えている。しかし、淡野の考える作戦の中で、一度、社長を誘拐し、一緒に時間を共有した、ということ。さらに、プレ、とも言うべき事件を起こしているという「実績」。子供を救うため、警察に強力をしたいと考える。しかし、紳士的な態度の犯人ならば……。しかも、「プレ」事件の話が本当だったら……という社長の葛藤が生まれ、やがて、犯人、警察、被害者という三すくみの関係になってくる緊張感は独特。この感想を書くのに、他の人の感想を見ていると、序盤が長すぎ、みたいなものも散見されたのだけど、私は、序盤のこの描写が全てに活きて来るからこそ、の後半だと思う。
振り込め詐欺で培ったノウハウを誘拐へ転用して。その行き着く先、という話は非常に面白い。ただ、多分、警察側が「被害者が100%信頼できない」という思いを抱いた、というのが失敗の元でもあるんだろうな……という気もする。その匙加減は微妙なところなのだけど……
まぁ、この事件が完全に決着がついたのか、というと……っていうモヤモヤ感はあるのだけど、それをマイナスとしても面白かった、と評価する。

No.3849

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