(書評)黒警

著者:月村了衛



警視庁捜査4課の刑事・沢渡。外国人犯罪など、最低な現場を経験し、しっかり倦んでしまった彼は、かつて、組織に追われた中国人女性を見殺しにした、というトラウマで暴力団幹部・波多野と繋がっていた。そのような中、新興中国人組織「義水盟」の沈と知り合った2人は、中国人組織「天老会」の最高機密を握っているというカンボジア人女性・サリカを匿って欲しいと頼まれ……
これまで私が読んできた著者の作品というと、『機龍警察』シリーズのような近未来を舞台としたSF作品。はたまた『コルトM1851残月』のような時代小説ばかりだったのだが、本作は現代日本を舞台とした作品。その意味では新しいタイプの作品といえる。
冒頭の粗筋では、沈が現れて、と書いたのだけど、そこに辿り着くまでは結構、時間が掛かる。中盤までは、文字通り、沢渡の「倦んだ」日々が描かれる。癒着、と言われるかもしれないが、波多野との関係を続け、中国人グループが作っているらしいコピー商品の出先を探る。しかし、そもそもが「倦んだ日々」でのもの、捜査に身が入るか、と言えばそうはならない。そんな現状がこれでもかと綴られる。そして、沈、サリアとの出会い。そして、悲劇……
倦んだ日々の中での、それでも重要なピースの喪失。そして、復讐。決して、褒められるようなやり方ではない。しかし、その中に充実感を抱いていく、というあたりの心情は凄く良くわかる。この辺りは、著者の上手さだろうな、と思う。
ただ……作品の分量が少ないのもあるのだけど、意外とアッサリと、その計画とかが上手くいってしまう、というのがやや拍子抜け。先に、倦んだ日々が打って変わって……という気持ちがわかる、と書いたのだけど、やっぱり、それに何らかの落とし穴があるのかな? とか想像してしまうわけ。ところが、何か上手くいって主人公はスッキリしました。お終い、みたいな感じで、ハッピーエンドではあるけど、それで良いの? という気もしてしまって……
正直、自分で言っておいて、随分とワガママな感想だとは自覚している。ただ何かモヤモヤとした気持ちが残った、というのが偽らざる感想である。

No.3858

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