(書評)ブラック・ベルベット

著者:恩田陸



外資系製薬会社のウィルスハンター・神原恵弥。全身を黒い苔に覆われて死ぬ、という話の調査と、その国で失踪したという日系アメリカ人研究者の捜索のため、アジアとヨーロッパの境界の国・T共和国を訪れる。しかし、ついて早々、依頼を受けていた研究者は目の前で、通り魔に刺されて殺害されてしまう。不穏な動きが広がる中、恵弥は、同級生であり、かつての恋人でもあった橘と再会するのだが……
神原恵弥シリーズの第3作。と言っても、前作を読んだのは、07年なので実に8年ぶり。で、今回、舞台となる国は「T共和国」なのだけど、首都がイスタンブールとか……いや、思いっきりどこだかバレバレですぜ!? と思ったら、8年前の前作の感想でも、同じことを書いていて苦笑い。
物語は、冒頭、捜していたはずの研究者が殺害されてしまう、というショッキングな事件からスタート。そして、そのような中で、恵弥が旧友であり、現在はT共和国で飲食店を開いている満らと共に国内を回るというたびへと出かける。各所を巡る中、なぜか負ってくる警察関係者。さらに、日本人が黒幕として強力な麻薬をばら撒いている、という噂。かつてとは雰囲気の変わってしまった橘。そういったものが次々と現れてくる。
とにかく、物語としては、掴みどころがないままに様々なピースが投げかけられる。そんな印象を抱く展開。よく、ミステリ作品をジグソーパズルに例えて、「それぞれのピースがどこに繋がるのかわからない」という表現をすることがあるけど、この作品の場合、そもそも、色も材質も違うピースばかりで本当に繋がるのかどうか? そもそも、絵は一枚だけなのか? そんな気分にさせられていく。実際、著者の作品の場合、違う絵が何枚かありました、みたいなものもあるから余計に。
でも、まぁ、このシリーズは、主人公の恵弥のキャラクターと不可思議な状況、というのが売りだったと記憶しているのだけど、本作の場合、その主人公・恵弥についての掘り下げが深く行われた印象。何しろ、主要な登場人物が恵弥の過去と関わっているだけに。
多少、ドタバタした感はあるが、恵弥の過去が掘り下げられ、そして、次々と出てきた謎を繋ぐ線もしっかりと結ばれる。そういう意味で、終わり方も納得ができるし、そういう意味で、著者の作品を読みなれていない人でも十分に楽しめるのではないかと思う。

No.3860

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