(書評)バビロン 1 女

著者:野﨑まど



東京地検特捜部の検事・正崎善は、製薬会社による臨床試験不正事件を調査する中、1枚の奇妙なメモを発見する。毛や皮膚、そして血痕の混じったものが付着したその紙には、ひたすらに書かれた「F」の文字が……。紙を残したのは、不正には関係していない大学の医学部准教授・因幡。なぜ因幡が? 調べる正崎だったは、因幡は奇妙な姿の遺体として発見され、今度は、東京から神奈川にかけて作られる全く新しい行政区・新域の首長選挙とのつながりが見え隠れし始める……
先日読んだ『美少年探偵団』(西尾維新著)と同じく、「講談社タイガ」創刊ラインナップの1冊。
ずばり言う。これは面白い!
物語は、冒頭に書いたように、製薬会社の行った臨床試験不正事件の捜査から始まる。ところが、その最中、資料にまぎれていた1枚の紙から臨床試験と無関係なはずの大学准教授の奇妙な死体発見へ繋がり、今度は、その准教授に選挙に出馬している大物政治家の秘書が接近していたことが判明。そして、その選挙そのものについても奇妙なことが見え隠れしていく……
ある意味、当初の事件とは全く違う方向へと進んでいく事件。そもそも、偶然に関係者につながりがあっただけかも知れない。けれども、そうであると確信するまで調べねばならない。しかも、その中で、正崎は、腹心の部下をも奇妙な形で喪ってしまう。となれば、ますます、止まることができない。そして……
事件そのものは奇妙ながらも、検察官が、政治家らを追う。その意味では、極めて現実的な中でのミステリ。そして、その新域の首長選を巡っての壮大な陰謀が明らかになって……というスケール感がまず凄い。そして、それが明らかになって……で、解決するのではなく、そこから今度は一気に急展開へ……
タイトルに「1」とあるように、この巻はシリーズの序章という位置づけなのは確かだろう。でも、にも関わらず、次から次へと物語ところころと転がし、なおかつ、世界観そのものを逆転させてしまう、という著者の鮮やかな腕はいかんなく発揮されている。かなり風呂敷を広げてきた感はあるのだけど、思い切り、今後が気になって仕方がない。物語の導入編として文句なしの出来といえるだろう。

No.3861

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