(書評)贖い

著者:五十嵐貴久



7月頭、東京、埼玉、愛知で子供を標的とした事件が立て続けに起きる。一見、バラバラに見える事件は、それぞれ、行き詰まりを見せ始める。そのような中、東京の事件を「遊軍」という形で追う刑事・星野は、ある一人の男に目をつけて……
本作に登場する刑事・星野は、『誘拐』に登場している……らしいのだが、全く記憶になかった(笑) 元SITの交渉人というのだけど、交渉人を題材とする作品を著者は沢山書いているので、そっちの印象もあまりないし(笑)
で、感想なのだけど……正直なところ、著者の作品としてはかなり読むのに時間が掛かったな、という感じ。勿論、最大の要因は、その分量。単行本で上下2段組。そして、470頁あまりの分量は、過去の著者の作品の中でも最長クラス。ただ、それでも、リーダビリティの高い著者の作品にしては時間が掛かった印象が残る。
物語は、冒頭に書いたように、3つの事件が立て続けに起こるところから始まる。東京都では、小学生が誘拐され、その頭が小学校の校門に置かれる、という状況で発見される。埼玉では、女子中学生が山中で他殺体で発見され、愛知では赤ちゃんが消失し、コインロッカーの中で遺体となって発見される。それぞれ、全く違う形での事件。それぞれの県警も、関連性は考えず、それぞれ独自に事件を追う。異常者の犯行ではないか? 性犯罪の前歴を持つものは? 虐待の末に? それぞれのアプローチで、各県警は捜査をするのだが、だんだんとそれに限界が見えてくる。そのような中……
ある意味、これって現実的な方法論なのだと思う。ハッキリした共通点があるならともかく、全く違うようにしか見えない犯行。ただ、それを俯瞰してみている読者とすれば、関係があるのは一目瞭然。しかも、その合間合間にある人物の描写があるだけに、この人がキーマンなのだ、というのもわかる。そして、それぞれの県警の捜査の中で、その人物が浮かび上がるけど、それぞれ結びつかない。その状況に、もどかしい、というか、イラっ、というか、そういう何とも言えない感覚を持った。
この感想を読むに当たって、他の方の感想とかも見ているのだけど、どちらかと言うと絶賛しているものが多い。確かに、リアリティという点では十分にあると思うし、そのキーマンの絶望とかも凄くわかる。その点は凄くよかった。ただ、一方で、先に書いたように「ここにつながりがあるのは明白なのに!」とわかりつつ話がなかなか進まないのは冗長とも思える部分があったのだ。これ、どっちを優先するのか、だと思う。個人的に、著者の作品のよさの一つが、テンポの良さ、リーダビリティの高さ、と思っているので、その点ではちょっと……と思う。
とは言え、十分に面白かった作品。時間があるときに、ゆったりと読むことをお勧めする。

No.3865

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