(書評)モーテ 夢の狭間で泣く天使

著者:縹けいか



一人の亡霊を巡る事件の真相が解明され、平穏が戻ったかに思えたグラティア。しかし、そのムードメーカー的な存在である少女・アミヤはモーテを発症してしまう。だんだんと荒んでいく彼女を見かねたダンテは、彼女の願いを聞き入れ、彼女と共にグラティアを離れ、ローマへ。起こるはずもない奇蹟を願う二人だったが……
前作、『死を謳う楽園の子』のラストシーンが衝撃的だっただけに、待ち望んでいたその続編。著者のあとがきで、そちらの続編だから、ということは記されているのだけど、物語の後半は『水葬の少女』を読んでいないと理解できないと思うので、そちらも読んで欲しい、というのを最初に記しておきたい。
物語は、前後半で大きく趣が異なる。ただ、全編を通して、「苦しい」「苦い」、そんな印象を抱くというのは間違いないところ。
前半は、冒頭に書いたように、モーテを発症してしまったアミヤ。「大丈夫」といいつつも危うい行動が出始め、荒んでいく。そして、そんな彼女が願ったのは「ローマに行ってみたい」というもの。モーテを抱えた子供たちを保護するための施設であるグラティアは、確かに彼らにとって「住み心地の良い」施設。前作の冒頭、ダンテが抱いていたような、彼らは可愛そう、というような感じは受けさせない。しかし、施設であるが故の不自由さは当然にあり、モーテを抱えている子供たちが本当に自由に行動できる、というわけではない。100点満点で言うと、70点くらいは確保してくれるけど、90点、100点は絶対に手に出来ない。勿論、その外では0点とかもありえる。そんな中でのアミヤの「外へ」という願い。
それを受けてのダンテの行動。元々、ローマで暮らしており、アパートの契約も残しているダンテ。そこを拠点とし、アミヤの思いをかなえようとするダンテ。それは、明るく楽しいもの。……しかし、モーテの魔の手はどんどん近づき、それすら危うくなっていく。そのような中で、アミヤに対する想いを痛感させられていくダンテ。しかし……。滅茶苦茶に切ない。
そして、後半の物語。アミヤへの想いを募らせつつ、しかし、その願いをかなえることが出来ず、そして、失踪されてしまった。そのような状況で、戻ったグラティアでは、同僚であったアランもまた失踪していた。何かある、と、ダンテはアランを追って……
こちらは最初に書いたように『水葬の少女』を読んでいないとわからない部分だと思う。そして、正直、後半のこの展開は、ちょっと冗長にも感じた部分だったりする。というのは、私自身は、どうしたってダンテ、そして、アミヤの話を主にして欲しかったので、それ以外のキャラクターの話が……となると、と思うわけである。勿論、そのような状況に陥っても、アミヤの、「最期の」願いをかなえたい、という一念があったことはわかるのだが……
ただ、それでも、エピローグを読むと思うことはある。
「俺はアミヤをこの手で殺したい」
帯にも書かれているダンテの台詞なのだけど、ある意味、「大切な人の最期を看取る」とか、そういう状況の究極形なのかも知れない。勿論、法律云々と言う問題はある。しかし、苦しんでいる本人。そして、それを見取る側。少なくとも、死の場面に直面するからこそ、割り切る……というと何だけど、ひとつ、心の整理が出来る、というのは絶対にあると思う。
苦しいし、嫌だし、辛いし。でも、それを目の当たりにしたからこそ進めることもある。そんな結末を堪能することも出来た。


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