(書評)ウツボカズラの甘い息

著者:柚月裕子



家事と育児に追われ、ストレスもあってかつての美しさを失った主婦・文絵。彼女はある日、懸賞サイトで当てたディナーショーで、中学時代のクラスメイトである「加奈子」を名乗る女性と出会う。そして、美容品販売の仕事を手伝って欲しいと持ちかけられる。一方、鎌倉の貸別荘で男性が頭部を強打され、殺されているのが発見される。捜査に当たる神奈川県警の刑事・秦と菜月は、サングラスをかけた美女が、被害者周辺にいたことを突き止める……
すぐにわかると思うので、ネタバレで書くけど、物語は時系列の違う2つの視点から描かれる。勿論、文絵の視点と、刑事たちの視点で。
殺された男は、何をしていたのかよくわかない。ただ、美容関係の仕事をしていて、とんでもない報酬を得ていたことだけ。しかし、突如、事務所を締め、そこからは謎。そして、その一方の文絵のエピソードは……
普通の学生がカルト宗教に、というような過程が描かれた『神様の値段』(似鳥鶏著)を思い出したのだけど、本作の文絵もそれに近いものを感じる。突如、自分の目の前に現れた同級生を名乗る女。美容品の販売を、という態度に胡散臭さを感じ、警戒心も感じる。けれども、「美しくなっている」と言う言葉は、お世辞もあるんだと思いつつも悪い気はしない。そして、実際、商品を買わされることもないし、むしろ、報酬はもらえている。100%の信頼はしていない、でも……と深みにはまっていく。その過程が非常に丁寧に描かれている。
そして、そんな物語は中盤になって交錯する。そして、その中で、そこまでの前提をひっくり返すような衝撃の事実が判明! さらに、その中で、死の連鎖があることも判明して……
と一気に盛り上がった! ……までは良かった……
この時点で話の3分の2以上が経過しており、どう決着をつけるのか、と思いきや……なぜか、ダイジェスト展開。それまでの丁寧な描写は何だったの? という感じに、あっという間に真相へとたどり着いてしまう。いや、何が何なのか、という構図はわかりやすいのだけど、でも、ねぇ……。
正直、打ち切りマンガの無理矢理なまとめを見ているような気分になってしまった。

No.3877


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