(書評)生き方が見えてくるナガシマ学

著者:明石要一



野球界のスーパースター「長嶋」だが、もし長嶋が会社の社長だったら? もし学校の先生だったら? 成功するのかを、ライバルでもある野村と比較しながら、徹底的に検証。
という風に紹介されている本。ハッキリ言って、この本は、社会調査法などを学ぶ際に教科書にすべきだと思う。「ダメな調査・分析の見本」として。
まず、本書を読んでいてわかるのは、著者の研究者としての不誠実さ。アンケート調査の結果を元に展開するのだけど、そもそも、その調査はどういうものなのかが一切書かれていない。ただ「ウェブ調査です」とだけあるのみ。
なので、いきなり疑問が浮かぶのである。第1章、第2章では、長嶋茂雄、野村克也両氏についての認知度を調べている。それぞれ、第1問として、「長嶋茂雄(野村克也)を知っていますか?」と尋ねている。すると、長嶋氏が77%、野村氏が74%ほど「よく知っている」、長嶋22%、野村25%ほどが「名前は知っている」だったで、「聞いたこともない」がそれぞれ0.4%だった、ということを示す。まぁ、これはいいのだけど、第2問で「長嶋茂雄(野村克也)を好きですか?」と尋ねる。そして、その選択肢が「すごく好き」「好き」「少し好き」「好きではない」となる。「どちらでもない」とか、「判断のしようがない」とかはない。で、しかも、この4つの選択肢の合計が100%になっているのである。さて、「名前は知っている」「聞いたこともない」人はどうしたのだろう? 「名前を知っている」だけの人、さらに「聞いたこともない」人は、好きも嫌いもあったものではないだろう。第2問の回答は、誰がしたのか(調査参加者全員なのか、それとも、「よく知っている」なのか、ということ)、そういう説明がないので、何これ? としか思えないのである。
さらに、第3章~第5章は、「○○(職業)に向いているのは長嶋、野村のどちら?」と尋ねる。これって……両氏をどちらも良く知っていないと回答のしようがないはず。ところが、これも両者を併せると100%になっているのである(つまり、どちらとも言えない、という選択肢もない、ということ) そういうところが全く説明されていないため、よくよく考えるとおかしいのである。
さらに、それを元に著者が「分析」をするのだが、根拠がない、というか、著者の偏見で「こうだ!」といっている部分が多すぎてお話にならない。先に出した「好きか?」というもので、野村氏に「好きでない」と回答した人は女性が多かった、と述べる。これはいいのだが、その理由について「野村のねっちこさとぼやきが女性に受け入れられないのでしょうか」などと言い出す。……いや、むしろ、それこそ尋ねるべき部分じゃないの? 「この職業に向いているのはどっち?」の回答に対しても「長嶋(野村)の○○なところが、そういう結果に繋がったと思います」とか言うのだけど、その「○○なところ」で回答した、と言う根拠はなく、著者の「こうだったに違いない」という妄想によって結論付けられてばかり。
しかも、時折、矛盾していることを言い出す。「人生の相談をしたのはどちら?」で野村が上回ったことについて、野村は貧しい家庭に育ち、テスト生から苦労して這い上がったからだろう、という。ところが、「スポーツで伸び悩んでいる人をはげますのはどちら?」で長嶋が上回ったことについて、「野村は記録の人と言われるように戦後初の三冠王を取るなど、スランプに悩んでいるイメージがないから」と言い出す。……ちょっと前は、苦労を重ねた人だから、と言って、次はスランプのイメージがないから、って何かおかしくね? スランプがなかったとしても、その苦労話から励ませるはず、と思う人は多いと思うのだけど。凄くその場しのぎの理由付けをしているように思えてならない。しかも、それが、実際に「その理由はなんですか?」とか聞いての結果なら矛盾していてもわかるけど、全て著者の妄想だとすれば、ねぇ……
第9章では、5000人調査の結果、子供の頃の体験量が多いほど、成功している、という別調査の結果を示す。ただ、これは、以前に指摘したように、こちらもWEB調査で、その概要を見ると、大学進学率が20%台だったはずの60代男性の大学進学率が50%超など、極めて偏った回答者だったりと信頼できない調査といえるものである。それで収入差とかを分類しても無意味であることは明らかだろう。
とにかく、調査概要すら示さない不誠実さ。さらに、結果についての理由が全て著者の偏見。これをどう評価しろ、というのか?

最後に、長嶋氏について著者は「千葉の佐倉出身で、太平洋の黒潮を浴びて育った」と書いている。……佐倉って、千葉県の内陸部の町で、主要な産業は農業なんだけどなぁ……。このあたりまですべて著者の偏見って、別の意味で凄いと思う。

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