(書評)君の色に耳をすまして

著者:小川晴央



「声の色」が見えてしまうため、見たくもない人の感情や嘘が見えてしまう芸大生・杉野誠一。そんな彼が、キャンパスで出会ったのは、失語症を患った少女。川澄真澄と名乗る彼女は、誠一が(同学年だが)先輩である我妻と共に行っている映像制作の課題に協力したいと申し出る。そして、その映像に、テープに録音されていた姉の歌を使って欲しいと申し出る。しかし、そこにはある秘密があって……
前作、『僕が七不思議になったわけ』は、連作短編の形で進展していたのだけど、今回は完璧な長編。
冒頭に書いたとおり、課題である映像制作に協力してくれることとなった真冬。共感覚を持っているが故に普段、相手の感情が読めてしまう誠一にとって、筆談で語るため、そういう問題がない真冬との会話は新鮮そのもの。そして、そのやりとりにどんどん惹かれていく。そして、そのような中で見え隠れしている真冬の姉についての謎。ちょっとした違和感……
中盤までは、いかにも、なラブストーリー。それがだんだんと不穏な方向へと舵を切り、そして……
序盤の、誠一が真冬に惹かれていく展開の中にあるちょっとした仕草、台詞……そのようなものがが上手いこと繋がって、真冬の秘密そのものへと繋がって、そして、中盤の決定的な一言で不審へ……というつむぎ方は凄く上手い。そして、その背後にあるものも……
真冬の失語症の原因となった姉の死。その死を巡って、第一段階としての理由。さらに、その背後にあったもう一つの理由。それ故、という悲壮感はかなりシリアスなものだし、それを落ち着かせる誠一の発見……。声から感情が見えてしまうから……という理由で、それと向き合う必要のない映像編集へと向かった誠一。でも、その編集をしていたからこそ発見できた真冬の救いとなる音声……。このあたりのつなぎ方も凄く綺麗で良かった。文庫裏表紙の紹介文では「透明な女の子」とあるのだけど、物語そのものに透明感を感じた。
うん、面白かった。

No.3885

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