(書評)天久鷹央の推理カルテ2 ファントムの病棟

著者:知念実希人



炭酸飲料に毒が混入されたと訴えるトラック運転手。自分の病院では吸血鬼が現れるという看護師。そして、病院で天使を見た、という直後に体調を崩す少年達。普通では各科で「診断困難」とされた患者が回されてくる統合診断部には、今日も今日とて、不思議な症例が舞い込んでくる。そして、その裏には思いもよらあい病が隠れていて……
シリーズ第2作。
前作は、4編中2編は、医療に直接関係ないのではないか? というエピソードがあったのだが、今回はガッツリ医療の知識がなければならない謎解きばかり。そういう意味では、作品らしくなった……のかな?
運転中、コーラを大量に飲むのが週間となっているトラック運転手。しかし、その日、いつものように口にしたコーラの味に違和感を覚え、そのまま意識を喪って事故を起こしてしまう。折りしも、食品への毒物混入事件がニュースを騒がせている。今回も? しかし、コーラから毒物は発見されず……
味への違和感の理由。そして、それだけコーラを飲み、太っているのにほぼ健康値という健康診断の結果。そこから導き出されるのは……? 異常が出た、というのではなく、異常が出ない、というところから判断して病を発見するという発想はなかなか面白い。病そのものも比較的、身近な病なだけにより、その思いを強くする。
2編目の吸血鬼騒動。こちらは、題材となる病そのものがあまり知られていないものなので……。ただ、病院というのが、当然のことながら営利企業であること。そして、そのための戦略。そういうテーマが内包されている。ただ、この作品で舞台となった病院に問題があるのは確かだけど、そこを苦境にして、というのは、同じようなテーマの作品を多く扱っている久坂部羊氏の作品を読んでいるだけに解決策ではないんだよな……とも思う。いや、スカッとはするんだけどね。
そして、今回の表題作とも言える3編目。天使が現れ、入院していた子供の病が悪化する、という小児病棟。「天使が現れる」なんていうのは、鷹央がいかにも飛びつきそうなのに、鷹央は病棟に足を運ぼうとすらしない。そこには、鷹央の過去も関わっていて……。前巻から描かれていた鷹央の長所である膨大な知識と判断能力。しかし、同時に欠点である不器用さ、コミュニケーション能力。研修医として、その欠点がこれでもかと出ていたときに、なぜか懐いてくれた少年。しかし、その少年は余命いくばくもなく……
謎解きそのものよりも、その過程での鷹央の掘り下げが強くされたように感じる。
……というか、ぶっちゃけ、謎解きについてはちょっと強引な感じもした。というのは、犯人は、なぜ、そんな知識を持っているのだろう? そして、仮に知識を持っていたとして、そのためのアイテムを手にするのは困難ではないか? と思えるため。そこはちょっとマイナスと評価したい。

No.3897

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  • 天久鷹央の推理カルテII ファントムの病棟 ≪あらすじ≫ 炭酸飲料に毒が混入された、と訴えるトラック運転手。夜な夜な吸血鬼が現れる、と泣きつく看護師。病室に天使がいる、と語る少年。問題患者の巣窟たる統括診断部には、今日も今日とて不思議な症例が舞い込んでくる。だが、荒唐無稽な事件の裏側、その“真犯人”は思いもよらない病気で…。破天荒な天才女医・天久鷹央が“診断”で解決する新...
  • 2016.01.07 (Thu) 23:07 | 刹那的虹色世界