(書評)途中の一歩

著者:雫井脩介





仕事一筋なのにヒット作に恵まれない漫画家・覚本。そんな彼は、新創刊されるコミック誌での新連載の準備に追われながらも、仲間である長谷部、国中、相馬らに誘われて婚活のための合コンに打ち込む。そんな覚本の担当となった綾子、玉石が担当することとなった人気漫画家の優、何となくでなだれ込んだ友人の結婚式の二次会で合コンに積極的に挑む女性と出会った会社員の奈留美。男女6人の「一歩」を描く物語。
著者の作品というと、『犯人に告ぐ』などのようなミステリ作品のイメージなのだが、本書は謎要素は全くない恋愛小説。もちろん、『クローズド・ノート』とか、『銀色の絆』みたいな作品もあるのだけど、群像劇で、かつ恋愛小説とは全く思っていなかった。……それが、文庫まで待っていた理由でもあったりするのだけど。
何というか……この作品のすごいと思うのは、ぶっちゃけ大きな緩急のようなものがないところ。合コンを繰り返すのと、仕事に追われる。その繰り返しで、何かこれといった事件が起きるわけじゃない。まぁ、早い段階で優が、デビュー当時から関係を続けてきた(当時の)編集長である土屋との関係を清算する、という部分はあるのだけど、それくらいだし。
で、その中で何か推進力となるのか、というと、解説で本作の(単行本時の)編集者が書いているように「共感」できる面々という点だと思う。仕事一筋で、とにかくそちら優先。でも、単なるモーレツ社員みたいなキャラか、というと結構、周囲にも流される覚本。結婚したい、恋人が欲しい、という気持ちはあるけど一歩が踏み出せない奈留美辺りは、自分も、と思う人が多いだろうし、あまり自覚していないとは思うものの、国中の漫画家死亡の女性に対する態度のように親切心だけど、何か押し付けがましいところもあるんじゃないかと思う。自分に自信を持っているものの、変化に対する不安とかも持っている優。ちょっとしたギャグとかを交えながら、それを描いていくために大きな緩急がないのにどんどん読み進められるのは見事といわざるを得ないと思う。国中あたりの嫌な面と、覚本、奈留美の不器用さみたいな面では後者の比率が多くて、前者で嫌な気分になりづらい、というバランスもいい。
まぁ、メインの登場人物が皆、ハッピーエンドでとか上手くいきすぎの気がしないでもない。でも、口だけだと思っていた人物の思わぬ面とか、はたまた、成長とかもあるので決して嫌味とも思わなかった。ほっこりとした作品を読みたい、というのならいいのではないかと思う。

No.3902&No.3903


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