(書評)シャーロック・ホームズの不均衡

著者:似鳥鶏



殺人事件により両親を喪った天野直人、七海兄妹。現在は児童養護施設で暮らす二人は、養父になりたい、という人物に呼ばれ、長野県の山中にあるペンションへと向かう。しかし、そこで待ち構えていたのは、ペンション従業員の絞殺死体と、関係者全員にアリバイが成立している、という状況。そのような中、七海は奇妙なところに興味を抱いて……
というところから開始される連作短編集。ある意味、講談社タイガというレーベルの方向性を感じる物語。
全4編のエピソードがあるのだけど、それぞれ非常に本格テイスト満点のミステリ。冒頭に書いた、関係者全員にアリバイがある不可能状況での殺人事件。誰も入っていないはずの館の中で起きた彫刻の破壊事件。ぬかるんだ畑で、銃で撃たれた上にナイフで、という殺人事件(勿論、足跡は被害者のみ) 廃コンビニで発見された他殺体。ガラス張りの元コンビニの建物だが出入り口は一つで、それは施錠されており、替わりにガラスが割られていた。しかし、そのガラスは内側から割られた形跡……
それぞれ、一応、合理的な回答が示されるのだけど、同時に「?」と思うところもあったりする何ともいえない味。特に、3編目なんて、一見、それで合理的な気もするのだけど、物証をどう隠したのか? とか、その程度のやり方で出来るのだろうか? と思ったりとかね。でも、そういう無理っぽさも含めて、本格モノという感じがする。
……という風に書いたのだけど、むしろ、その事件の背後がある、というのが、先に書いた「レーベルの方向性」を思わせる理由。
事件が起きて、それを名探偵が明らかにする。これは、ミステリ小説におけるある種のお約束。しかし、本作の場合、そういう事件が起きる理由と言うのが存在している。そして、それはワールドワイドな陰謀。『戦力外捜査官』シリーズとか、大規模な事件も描かないわけではないけど、あくまでも現実的な世界観の話を書く著者にあって、ファンタジー的な部分を入れてくるあたりに新鮮味を感じた。
まぁ、直人の存在、少なくとも今のところの直人も絶対に必要な存在だよなぁ……。辰巳が言うようにシスコンなのは確かとしても、いくら七海が優れていても、それを伝えることができないんだもん。

No.3904

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  • シャーロック・ホームズの不均衡 著:似鳥 鶏 発行元(出版): 講談社(タイガ文庫レーベル) ≪あらすじ≫ 両親を殺人事件で亡くした天野直人・七海の兄妹は、養父なる人物に呼ばれ、長野山中のペンションを訪れた。待ち受けていたのは絞殺事件と、関係者全員にアリバイが成立する不可能状況!推理の果てに真実を手にした二人に、諜報機関が迫る。名探偵の遺伝子群を持つ者は、その...
  • 2016.01.29 (Fri) 23:30 | 刹那的虹色世界