(書評)警察庁最重要案件指定 靖國爆破を阻止せよ

著者:八木圭一



靖国神社にドローンが墜落した。そこには「A級戦犯の分祀」「竹島・尖閣諸島領有権の放棄」「慰安婦と徴用兵への賠償金の支払い」 その3つを要求し、政府が応じない場合には靖国神社本田を爆破する、という犯行声明が。日韓関係が悪化していく中、公安は、対馬出身の大学生・清水に目をつけるが……
著者のデビュー作『一千兆円の身代金』もそうなのだけど、著者は、政治における問題を描きたいのかな? というのを思う。
まぁ、本作については、結構、近年の日韓関係にまつわる時事ネタを多く拾ってきて、なおかつ、本作が刊行された直後に、靖国神社で実際に爆破事件が起きるなどタイムリーな内容である、ということは言える。また、前作は国の財政について、凄く一面的な意見を延々と聞かされた気分だったのだけど、本作は多視点で、それぞれの立場などで描いており、前作ほどのウンザリ感はなかった。ただ、書かれた内容が、特にそこに注目しているわけでもない私すらどこかで見たようなものばかりであまり深く掘り下げられた感もなかったのだが。
物語は、事件の捜査に当たる公安刑事の渡辺。公安からマークされる立場になってしまう大学生の清水。事件について取材している記者の真美。3つの視点を中心に展開される。
この中での読みどころは、清水の視点。対馬生まれで、東京の大学に通う清水。進路のことで父親と喧嘩をし、仕送りがとめられた、ということに悩むごくごく普通の学生。ところが、友人と靖国神社に行った、ということでマークされ、そのPCで事件に関与させられてしまう。そして、警察に事情聴取された、と言うことを持って犯人扱いされ、周囲からも白い目で見られることに……。政治的な話というよりも、文字通り、冤罪により日常が壊れていく恐怖の方に興味を引かれた。実際には、もっと派手なネット私刑とかされそうだけど……
正直、真相についてはちょっと肩透かし。何と言うか……警察にしろ、何にしろ、なぜ、そんなに一面的な思考しかしないのか、と……。正直、この可能性について警察が考えていない、としたらそれってただの無能だと思うのだが、少なくとも渡辺視点の物語では終盤になるまで可能性の話すら出ていなくて「おいおい……」という感じ。
前作よりは好きだけど、それでもあまり良い評価はしづらいかな?

No.3906

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