(書評)総理にされた男

著者:中山七里



舞台俳優とは名ばかり。同棲している恋人のヒモのような日々で、劇場では、偶々、姿が瓜二つな総理・真垣のモノマネで前説をしているだけの加納慎策。ところが、ある日、そんな彼は、謎の男達に強引にどこかへと連れ去られてしまう。そして、その先で待っていたのは官房長官である樽見。そして、樽見が言うのは、総理である真垣が重篤な病であり、その替え玉になってほしい、というものだった……
まず、物語の設定から言うと、2012年に民主党政権から自公政権に戻ったような状況。そして、そのときの総理大臣が、小泉純一郎首相、というような感じかな? 演説の仕方とか、そういうのを見ているとそうだし、真垣統一郎という名前も明らかに意識しているとしか思えない。と、同時に『月光のスティグマ』の裏側的な意味合いもあったりする。
「政治は理屈じゃない。感情だ!」
帯に書かれたキャッチコピーなのだけど、そのコンセプトに関しては貫かれており、爽快感がある。官僚の言葉ではなく、とにかく自らの言葉で語ろうとする慎策。そもそもの真垣が、そういうタイプであったが、その影武者となって意識をし、また、政治の素人だからこそ、党利党略といったものを超えて発言する、というのは面白い。そんな姿に、もともとは操り人形にするつもりだった官房長官の樽見、野党の幹部である大隈、はたまた、党内の役員達といった面々が惹かれていく、というのは判る気がする。
ただ……なんか、一面的だなぁ、と感じるところがあったりするのも事実。何と言うか、官僚=悪、とかそういう二分論的な描き方になってしまう、というのがどうにも……。エンタメとしては面白いのだけど、「政治をネタにした作品」としてはうーん、という感じ。
それと個人的に引っかかったのは、物語の収束のさせ方。ネタバレっちゃあネタバレだけど書いちゃうと、物語の中盤で身代わりだったはずの真垣は死亡してしまう。さらに、終盤には慎策の正体をする面々が全て退場。そして……、って無理がありすぎでしょう、と……。総理は天涯孤独な人ですか? と……
細かいところを気にしなけりゃ楽しめるのは確かだけど、色々気になって仕方が無い。

No.3909

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