(書評)影憑き 古道具屋皆塵堂

著者:輪渡颯介



大店の跡取りとして生まれ、同じ境遇の菊三郎、金吾と共に放蕩三昧の日々を過ごす円九郎。しかし、その放蕩により、金に困った3人は、出来心で再選泥棒をした挙句、それがバレてしまう。親からも見放された円九郎が預けられたのは、「曰く」つきの道具も平気で買い取る古道具屋の皆塵堂……
シリーズ第6作
まず思ったのが、著者は、よくもまぁ、こんな主人公を思いつくなぁ、ということだったりして(笑)
本作の主人公である円九郎は、江戸の大店の放蕩息子。ただし、彼自身はそこまでのワルというわけではなく、基本的には真面目な人間ではあるのだが、ひ弱で周囲に流されてそのまま悪をしてしまう、という存在。しかも、店番などもしたことがないため、客のあしらい方とかそういう点でもダメ。「役立たず」という意味では、過去の作品でもトップクラスだろう。
そんな円九郎が皆塵堂の居候になって、で、話が始まるのだけど、その背後には、皆塵堂の地主でもある清左衛門がいる。でも……
例えば、冒頭の円九郎が皆塵堂預かりになっての最初のエピソードである『欠けた水瓶』。清左衛門が「厳しく」といったことで始まった話だけど、オチで、彼自身が言うように『厳しい』じゃなくて『酷い』という状況。ある意味、酷いのだけど、それが味になっているのは上手いな、と思う。
とにかく、先にも書いたとおり、今回の主人公である円九郎は、決してワルではない。しかし、周囲に流されがちな上に、その場しのぎでかわそうとするため、結局、問題が悪化してしまう。そんなキャラクターがこれでもか、と描かれる中で、その悪友達が、次々と不可解な死を遂げて……
普通なら、緊迫感の塊みたいな展開なのに、皆塵堂の小僧・峰吉の妙な活躍(?)とかもあってなごまされ、そして……
ある意味、冗長とも取られかねない前日譚の思わぬところが真相への鍵になり、そして、ひたすら「役立たず」扱いの円九郎の将来にも関わる結末。今回もしっかりとまとまっており、満足な読後感。

No.3912

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村



スポンサーサイト

COMMENT 0