(書評)夜桜ヴァンパネルラ

著者:杉井光



人の血をすする「吸血種」の存在が公的に知られる近未来。人々を吸血種から守るために設置されたのは、『捜査九課』。その唯一の課員である美しき少女・櫻夜倫子は「真祖」。吸血種を狩る吸血種だった。そんな彼女の相棒として、九課に配属されたのは、バカだが、熱血な新人・桐崎紅朗。そんな二人の前に、吸血種感染を進める「王国」の存在が見え隠れして……
これまでの著者の作品で最もバカな主人公じゃなかろうか? 著者の作品って、主人公とヒロインはしっかりとしていて、その他、周囲の人々(主に大人)がどうしようもなくて、主人公がツッコミを入れまくる、というのが一種のテンプレ。でも、本作の紅朗は物凄いバカ。っていうか、警視庁と警察庁の違いすら知らない、って……
とは言え、本作の場合、それが良いアクセントになっている。
吸血種は人間ではない、という吸血種対策法が成立しつつある中、都内の大学で学生が吸血種に大量感染する、という事件が発覚。そして、その背後に、吸血種を感染させる「王国」という存在がいるらしい、とも……。吸血種は危険だ、殲滅すべきだ、そういう偏見交じりの視線が広がる中、警察内でも孤立する倫子。しかし、良くも悪くもまっすぐなバカである紅朗は態度を変えることがなくて……
吸血種を巡って、偏見、差別……そういう一種の差別問題的な要素があるわけだけど、これって色々な国で起きている人種差別とか、そういうのに通じるものがあるし、「王国」側もまたその自衛として……なんていう部分がある。その意味で背景は凄くシリアス。そんな中に、紅朗がいて、どっちかというとクール系のキャラである倫子を動揺させたりすることで、シリアスになり過ぎないよう中和している、というのが凄くわかる。あと、筑摩川警視長とか、監察官の矢神とかも締める所をしっかりと締めているのもいいところ(その意味では、本作の大人ってマトモな人だらけなんだよね)
「王国」の王とか、そのあたりのひっくり返しとかは、そもそも登場人物が少ないので予想できたところではあるのだけど、それはそれで欠点ではないし、倫子と紅朗のバディ作品として十分に楽しかった。続刊も楽しみ。

No.3913

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