(書評)プラージュ

著者:誉田哲也



魔が差して手を出した覚醒剤。その結果、仕事はクビとなり、執行猶予中の身となった貴生。悪いことは重なるもので、そんなときに、すんでいたアパートが火災になり、投げ出されてしまう。そんなとき、紹介されたのは、プラージュという名のシェアハウスで……
犯罪者、前科者の更生。大門剛明氏とか、薬丸岳氏とかがこういうテーマの作品を書いている印象だけどその誉田哲也版? まぁ、むしろ、作品的には乃南アサ氏の『いつか陽のあたる場所で』を思い出した。
物語は、冒頭に書いた貴生の視点を中心に描かれる。焼け出された結果、入居することになったシェアハウス。そこで暮らしているのは、個性的な人々。明るい雰囲気の人もいれば、風変わりの女性も。そんな中で、貴生に突きつけられるのは、前科者というレッテル。たかだか覚醒剤で、しかも、執行猶予中だから……。以前の業界を目指すも悉く失敗。それどころか、最早、そこに居所がない、ということを突きつけられる。そして、そんな苦しみの中、少しずつ気づいていくのは、シェアハウスに住む人々も同じように傷を抱えた人々である、ということ……
読んでいて思い出したのは、山本譲司氏の『続 獄窓記』。逮捕された、とは言え凶悪犯罪ではない。そう思っていたが、しかし、いざ普通の生活を営もうとしても、そこに自分のやったことが大きくのしかかる。そして、それが自暴自棄というった方向にも……。
ミステリ作品とか、刑事ドラマとかだと、前科をもった人間が集まると、それが悪い方向に……みたいな描かれ方が多いのだけど、真面目にやり直そう、と思ってもその過去が足を引っ張ってしまう。そのとき、同じような過去を持った人間が周囲にいて、理解してくれるから踏み止れる……。そういう利点みたいなところもあるんだ、という描かれ方は斬新だった(この辺りが、先に書いた乃南氏の作品っぽく感じた、という理由でもある)
物語で言うと、そんなプラージュにすんでいるAを追って迫るライターという存在がおり、それが誰で、Aは誰なのか? という謎。さらに終盤、ある大きな事件も発生する。……のだけど、終盤の事件がやや唐突に感じられたのと、ライターに関しての仕掛けは、全員の掘り下げがされきっていない感じもあって驚きと言うよりも、「へー……」くらいで終わってしまった。ちょっと肩透かし気味。
ただ、貴生の成長と言うか、葛藤。それを応援する大家である潤子の存在。そういうものは非常に印象に残るものだった。

No.3924

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