(書評)ジャイロスコープ

著者:伊坂幸太郎



7編の作品を収録した短編集。
巻末で、著者がインタビューの形でコメントを書いていて、その中でも話題になっているように、様々なタイプの作品を収録した形になっている。ある意味、ごった煮、とでも言うか(笑)
スーパーの駐車場で相談屋を営む稲垣さんの下で働くことになった青年を描く『浜田青年ホントスカ』。元々、東京創元社の『蝦蟇倉市』というアンソロジー作品集に収録されたもの、ということで一番、ミステリーらしい作品。とは言え、相談屋のプレハブ小屋で暮らしてくれ、携帯電話を取り上げられ……よくよく考えると不自然ながら、何となく納得させられる理由付け。そして、その中でのひっくり返し。なかなか捻くれていて楽しい。
作中で最も分量の少ない『if』。通勤途中のバスで起きたバスジャック事件。いきなりのことに動揺し、「男は降りろ」という犯人の要求に唯々諾々と従ってしまった主人公。もし、あのとき、こうしていれば……。そして、そのときとは逆の選択をしたとき……。僅か十数頁しかない分量なのにしっかりと騙されました。そこが伏線とはね……
いきなり物騒な事件から始まる『一人では無理がある』。しかし、そこからはほのぼのという流れ。12月末の風物詩ともいえる物語の中で、必ずミスをしてしまう男の存在。しかし……。ネタとしては長編でもやれそうな物語なのだけど、それを短編でやるからこそ、テンポの良さになったのかな? とも思う。
その意味では、新幹線の清掃員である二村さんを描いた『彗星たち』も同様。元々、人付き合いが苦手な彼女が選んだ仕事は新幹線の清掃員。しかし、ただ掃除をしているだけではダメ、と先輩の鶴田さんに言われる。それからしばらく、その鶴田さんが病に倒れてしまった中……。清掃員仲間のキャラクターとか立っているし、そこでの仕事の意味とは? そんなテーマを内包していて、それを進めるだけでも、坂木司氏の一連の作品とかそういう感じになるんじゃないかと思う。……まあ、著者のカラーじゃないかな?(笑)

No.3925

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