(書評)天久鷹央の推理カルテ3 密室のパラノイア

著者:知念実希人



呪いの動画によって自殺を図ったとされる女子高生。男性に触れられただけで、文字通り、肌に異常を来たす女性。そして、密室で溺死した男……。常識的な診療では決して解けない、奇妙な出来事を解明できるのは、天久鷹央だけで……
というシリーズ第3作。全3編を収録。
今回は、序章でいきなり小鳥遊が鷹央の元から離れることになる……というやりとりがあり、その後、時間軸を遡ってエピソードを……という構成になっている。
うーん……。ある意味、今回は、小鳥遊が鷹央の元を離れることになる。しかし、色々と言いながらも鷹央の下についたことで、色々な知識などを吸収し、適切な診断を下せるようになった、という部分を強調したかったのだと思う。思うのだが……なんか、鷹央&小鳥遊が優秀と言うよりも、他が無能に思えてしまう点が引っかかった。
例えば、1編目。線路に飛び降り、怪我を負った女子高生。本人は自殺する気などなく、呪いの動画のせいだ、というが……という話。研修医時代に鷹央とトラぶったという精神科医・墨田が出てくるのだが……正直、この人、精神科医失格じゃない? と思えてならない。だって……患者の言葉に一切耳を貸さず、受験ストレスで発作的に自殺を図った。動画云々は、後付、と決め付けているんだもの。ぶっちゃけ、この話については、日本国内で大々的な事件がかつてあったこともあり、私のような素人でもある程度の可能性を考察していたりする。そう考えると、と思うのだ。
2編目にしてもそう。こちらは、箱入り娘として育てられた女性が、初めて付き合った男性との関係の中で、男性に触れられたら肌に異変が……というもの。こちらも墨田が出てくるのだけど、実際に肌に異変が起きているのに、心理的なもので、とのみにするのはちょっと……。こちらは、この作品を読んだため、読者がメタ視点で考えるからそう思う、というのはあるにしても……
その観点で言うと、3編目が一番楽しめたかな、と。文字通り、密室状態の部屋で死亡した男。その死因は、溺死としか思えないもの。しかし、密室に、というか、密室のある階自体に水気はない……。小鳥遊が、鷹央の下から離れることに、となったのは、この事件の容疑者に小鳥遊の先輩がなってしまったから。言い換えれば、先輩の容疑さえ晴らせば小鳥遊の異動はなくなる……
先に書いた密室で溺死という不可解な状況は素直に興味深いし、その真相に関わる病にも、「へぇ」とうなった。また、事件を解決する上で、事件直後の映像の不可解さをしっかりと発見し、解決の糸口へと繋げる鷹央・小鳥遊の洞察力など、魅力が十分に発揮されている。多少、関係者の行動が短絡的な気はするが、謎に気付かなかった理由について、仕方がないと思える説明がしっかりとなされておりそこまでの強引さは感じなかった。
3編目は面白かったのだが、ちょっと前半2編が足を引っ張ったかな? という風に思わざるを得ない。

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  • 2016.03.05 (Sat) 09:08 | 刹那的虹色世界