(書評)エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史

著者:園田寿、臺宏志



2015年、日本で初の「春画」の博覧会が大きな好評を得た。しかし、それと同じ頃、春画を掲載した週刊誌には警察による「指導」が行われることに……。また、愛知県では、写真展に掲載された写真に男性器が映っていた、として、警察による「警告」が入り、苦肉の策として写真に「腰巻」をまくという対処がされた。そのような最近の「わいせつ」を巡る事例について、第1章で、第2章で「チャタレイ事件」からのわいせつを巡る裁判について記した書。
なんか、タイトルに「攻防史」とあるので、もっと歴史的経緯を体系的に書いた書なのかな? と思っていたのだけど、あまり、そういう感じではなく、春画、ろくでなし子事件、ビデ倫、松文館事件、かなまら祭と言った最近の事例を描き、その前史としての判例を数件、紹介するという形になっている。
私自身は、結構、この手の表現規制などについては興味があり、それなりに調べているのだけど、近年の事例については、どちらかというと復習的に読むことが出来た。松文館事件とかは、自分で調べたことがあるし、その中での疑問点とかも多かったのだけど、そういうのがよくまとまっていると思う。
本書でも指摘されているのだけど、この問題の最大のポイントというのは、「わいせつ」かどうかの判断基準。言葉では色々と言っているけど、結局、突き詰めると裁判官が「俺が猥褻と思ったら猥褻!」というものになってしまう。そのため、裁判にいたる中で、検察側は「いかに猥褻だ」と言う形に持っていこうとし、弁護は逆へ……。逆に、第三者がアンケート調査などで、みたいなものは却下されてしむ。……それって何やねん、ってことになってくる。
もっとも、裁判に行く前には、警察が検挙して……となる。そして、作中で綴られるケースなどでもしばしば、警察、警察官僚による介入という「政治」の力が見え隠れする。最終的には裁判官、としてもその前に、警察が文化審査機関化している、というのも感じる。春画の掲載だけなら「猥褻」じゃないけど、同じ雑誌にヌード写真を載せると、とか何だかなぁ、って感じがするもの。
書籍として纏まっているのか、というとちょっと微妙な気がするのだけど、近年の事例などで、どういうことがおきつつあるのか、というのを知るには良いのではないだろうか?

No.3960

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