(書評)朝が来る

著者:辻村深月



「子供を返してほしいんです」 親子3人で平穏な日々を送る栗原家に掛かってきた一本の電話。その相手が名乗った名前は、確かに、息子の「産みの親」ではあるのだが……
「出産を巡る女性の実状を描く社会派ミステリー」とAmazonの内容紹介には書かれていたのだけど……ミステリーではないと思うのだけどなぁ……
物語は4章構成。1章、2章は、養親となった栗原佐都子の視点で綴られる。1章では、多少のトラブルなどはありつつも、平穏な日々を送る様子から、産みの親である片倉ひかり、という女性からの連絡が来るところまで。そして、2章では、佐都子が養子をもらうことになるまで、が綴られる。一方、3章、4章は片倉ひかり視点で子供を生むまで、そして、栗原家に半ば脅迫的な連絡をするまでが綴られる。
何と言うか……特別養子縁組について書かれている、みたいなことがあるのだけど、むしろ、その周辺の部分が印象に残った。
2章の佐都子が養子を取るまでの物語。ある意味、おせっかいな、でも、実際に子供が出来ない人に対する心無い言葉を投げかける親族。そして、不妊治療を開始して発覚した事実。周囲の人間が投げかける慰めなどもどうにも表面的で……。その雰囲気とかが凄く嫌。
一方で、ひかり視点の物語は……。姉と比べて、学力などで低いという評価をされるひかり。だからこそ幼いながらも反発し、同級生との性的関係を持ってしまう。そして……。自分は常識人だ。そして、その考えは普遍的なものだ。ひかりと親の関係。そして、その歪な関係。この辺りって、『私の命はあなたの命より軽い』(近藤史恵著)とかを思い出した。まぁ、ただ、ひかりの話の後半は、結構、無理やりに不幸にしている、という感じもしたけどね。
締めの部分だけ見ると、一応、希望っぽく見えるんだけど……よくよく考えると、ひかりの苦境って何も解決していないわけで……。これから、どうしたのか、というのが気になるところ。

No.3968

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