(書評)探偵・日暮旅人の遺し物

著者:山口幸三郎



目に見えないものを「視る」ことで依頼を解決する探し物専門の探偵・日暮旅人。そんな日暮旅人の活躍を描いた番外編短編集。
番外編だけに、時系列はバラバラ。しかも、パラレルワールドのエピソードなどもある、文字通り「何でもアリ」という感じの作品集になっている。確かに、あとがきで著者が書いているように、「故人が遺したもの」という共通点はあるわけだけど。
一編目の『像の殺意』。資産家が残した洋館。そこに遺された甲冑は呪いが掛かっていて、夜になると動き出す!? いかにも、なシチュエーションでの事件の真相そのものはシンプルなのだけど、このエピソードで印象的なのは旅人と対等に渡り合う執事じゃないかと思う。共感覚で相手の感情すら読み取る旅人に、その感情を読ませないって凄いと思う。その印象が強かった(笑)
逆に、地元の名士と言われた亡き「大先生」が愛した小学校の旧校舎の調査に、旅人が入る『畢生の接ぎ』。1編目とは違い、大先生がいかに、その旧校舎を、そこに集う子供たちを愛していたのか、というのが伝わってくる。そして奇しくも、その旧校舎の取り壊しを担当することになってしまったOBの市職員。「大先生の葬式」。なんか、この言葉も良いなあ。
3編目『テイちゃんと子猫と七変化』は、さらに異色。そもそも、語り口が誰なんだ?(笑) 物語は、テイが、旅人や雪路らには秘密にして、子猫を拾って……という話なのだけど、とにかく、ひたすらに可愛い。ところで、作中では、テイが子猫を「ワタゲ」と名づけたことに残念そうなニュアンスで綴っていたのだけど……ワタゲって名前、凄くいいと思う私のセンスはおかしいのだろうか?(苦笑)
物語の正統派な過去編という『君の音』。旅人が高校時代の物語なのだけど……、このシリーズにおいて、旅人が重い過去を背負っていて、そして、その復讐を……というのが一つのポイントだった。その復讐は、陽子の旅人への想いが全てを包み込んで……となったのだけど、陽子と再会する以前、その前にも、旅人のことを想い、そして完全に消し去るとまでは行かずとも、彼を揺れ動かしていた存在がいたのだな、というのを考えると感慨深いものがあった。
そんな感じで、色々とバラエティに富んだエピソード集でシリーズともお別れ……と思ってたら……
番外編短編集、第2弾もあるんかーい!!(笑)

No.3969

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