(書評)ブラック・ヴィーナス 投資の女神

著者:城山真一



理想と現実の違いに失望し、就職したメガバンクを退職した百瀬良太。現在は、臨時公務員として、金融関連の相談室に勤める日々。そんなある日、繊維工場を営む兄の金策を巡り、天才的な株取引の実績を持つ「黒女神」こと、二礼茜と出会い、そして、その助手になってしまう……
第14回『このミス』大賞、大賞受賞作。
株式投資を題材にしている作品。それを目にしたときに頭に浮かんだのは『WORLD END ECONOMⅰCA』シリーズ(支倉凍砂著)。ただ、そちらの作品のように、情報戦があるとか、空売りとかみたいなテクニックを駆使して……みたいな話ではない。茜は依頼を受けると、条件を提示する。そして、その条件を果たせば確実に結果を出してくれる。どういう風に、というのはほぼ描かれない。
で、話としては連作短編の形なのだけど、前後半で話の印象が大分異なる。
前半2編は、不可解な条件を出す茜が、実は依頼人の真の思いを汲み取っていて、という話。短期間で依頼を完遂する茜が、2ヶ月という長期間を提示した1編目。経営の苦しくなっている老舗和菓子店の社長は、ある程度のところで株を売りたくなるが……。若くして死亡した人気歌手の父親。実は薬物によって死亡した、ということで脅されている彼を守るために金を稼ぐのだが、その目的は……? この2編はどちらかと言うと、人情モノという印象。
ところが、後半に入るとカラーが異なる。国政選挙出馬を前にした元官僚の依頼を受けた……はずが、ヤクザに拉致され、資金を稼ぐことになる3編目。そして、有数の技術を持った工業会社を外国資本に乗っ取られるのを防ぐために戦う4編目。最初の2編とは違い、茜がどうやって投資をしているのか、とかは出てくるのだけど、理由があるにせよ違法なやり方ってどーなのか? 4編目については、政府とかもかなり無茶しているし。元々、ほぼ完璧に株式で儲ける、というところでリアリティは低いのだけど、後半は、そのほかまで無茶をしすぎており、ちょっとついていけなかった。
個人的には、前半のカラーで全編やってくれたほうが好きだったなぁ……

No.3975

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