(書評)ギブ・ミー・ア・チャンス

著者:荻原浩



夢はあるけど、空回り。そんな面々の頑張りを描いた短編集。全8編を収録。
うーん……テーマがハッキリしている、というのはわかるのだけど、コンセプトが近すぎるためか、何か全体的な展開とかも似たようなものが多いような……と感じられてしまった。
まず好きなのは、2編目の『冬燕ひとり旅』。売れない演歌歌手の琴路。今こそ、演歌歌手だが、それまでのバンド活動から、アイドルの片割れ、そして……。次々に周囲の思惑に振り回されての現在……。そんなときに舞い込んだテレビ番組の出演。しかし、それは「売れない演歌歌手」がオモチャにされるだけの番組……。そこで、彼女が取ったのは……。
それまで、散々振り回され、しかも自分の思惑とは違った方向へ……と描かれたからこその最後の開き直りは楽しい。それも、思惑とは違うのかもしれないけど、チャンスを掴んで欲しい、という気がする。
ちょっとカラーが違っているかな? と思ったのは7編目『リリーベル殺人事件』。
学生時代、同じミステリー研にいた夫と結婚した真由子。主婦として暮らす今は、小説家を目指して執筆中。一応のアイデアはありつつも、なかなか筆が進まない。折角、アイデアを思いついたのに、娘のママ友に付き合わされて時間が取れない。迫り来る締め切りを前に、何とか執筆を続けるが……
確かに、なかなか執筆が出来ないとか、そういう焦燥とかはあるのだけど、夫はちゃんと理解してくれるし、アドバイスもくれる(ただし、読まれると恥ずかしい) 頑張っているけど空回り気味……だけど、それ自体が幸せな状況と思えて暖かい印象に。最後は意外な落とし穴が……となったけど、それを受け入れても面白かった。
最後を飾る表題作。コンビニでバイトをしながら、お笑い芸人を目指す俺。しかし、コンビを組む相手すらおらず、しかも、自分より面白いと思える連中が周囲にわんさか。そんなとき、劇団員というバイト先の新人の才能を見出すが……
まさしく、展開は空回り、さらに挫折の連続。折角の相方候補も……天は二物を与えず、という言葉があるけど……。新たな挫折かと思ったところに、思わぬ形で……。チャンスは、チャンスなのだけど、別の意味のチャンスのように感じられるのが何とも……

No.3985

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