(書評)機龍警察 未亡旅団

著者:月村了衛



チェチェン紛争で家族を失った女性だけのテロ組織「黒い未亡人」。公安部との合同で捜査に当たる特捜部だが、未成年による自爆テロをも辞さない戦法に翻弄され続ける。そのような中、公休日であった由起谷は、半グレの少年に絡まれる一人の少女と出会う……
シリーズ第4作。
第2作である『自爆条項』、第3作である『暗黒市場』は、龍機兵のパイロットであるライザ、ユーリの掘り下げという印象が強いエピソードだったのだけど、本作はそんな前線のパイロットを支える刑事・由起谷、そして、理事官の城木の回といった趣。
冒頭に書いたように、公休日にカティアという少女と出会った由起谷。チェチェン紛争を気に起こった組織。そして、女性だけ。そのような中で、出会った少女がもしや……という思いを抱く。そして、そのアジトへの襲撃作戦。大失敗と言われる作戦ではあるが、その少女・カティアを捉えることに成功する。そして、その取調べを担当するのは由起谷。
この取調べのシーンが物凄い迫力。別に、刑事と容疑者による丁々発止のやり取りがあるわけではない。由起谷自身が言うように、戦場などで戦ったわけではない。カティア辺りに言わせれば「甘え」から不良行為に染まっていった半生。しかし、それを誇張するでもなく、淡々と語って行く様に物凄く引き込まれる。そして、問う。自爆をした者は、本当に自分の意思だったのか? 流されて、という者がいたのではないか? カティアが母と慕う組織のリーダー・シーラは、鬼子母神の逆、慈悲深い存在から悪鬼へと変貌してしまったのではないか? と。会話だけでそこまで引き込むのは凄いの一言。
そして、そのカティアからの情報が出てから、今度は城木の物語。官僚一家に育ち、兄は現在、与党の副幹事長という若手のホープ。ずっと兄に適わない、という屈折を抱えてきた城木だが、兄が海外にいた頃、「黒い未亡人」のリーダー・シーラと接触していたらしい、と知る。兄は「敵」なのか? そして、犠牲にされてきた女性を守るため、だったシーラが、自爆テロを行うようになってしまった理由は何なのか?
愛故に……
全てを受け入れ、全てを赦そうとした城木の義姉。そして、その愛ゆえに、聖母のような存在から悪鬼のような存在になってしまったシーラ。生まれ育った環境、今、生きている環境。そういうものまで全て違う両者が出会ってしまったからこその悲劇。
派手な戦闘シーンとかは、今回、抑え目だったのだけど、物語としての面白さは、これまでの作品の中でもトップクラスじゃないかと思う。面白かった。

No.3992

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  •  機龍警察 未亡旅団/月村 了衛
  • 月村了衛さんの機龍警察シリーズ・第4弾、「機龍警察 未亡旅団」を読み終えました。 5月のゴールデンウィークを前に、警察はある難題を抱え込んでいました。チェチェン紛争で家族を失った女性のみで構成されたテロ組織「黒い未亡人」が日本で活動を開始しようとしていたのです。その前哨戦として、警察は別件の捜査中に彼女たちと接触。交戦状態に陥ったのでした。彼女たちの戦い方は、自ら死ぬことをいとわず自爆...
  • 2016.04.15 (Fri) 16:55 | 日々の記録