(書評)名探偵に薔薇を

著者:城平京



「小人地獄をご存知か?」 大学院生である三橋は、バイトである家庭教師へ向かう途中、不審な男に声をかけられる。バイト先である藤田家の主婦・藤田恵子は知っている、というのだが……。そして、数日後、その藤田恵子が他殺体で発見される。「メルヘン小人地獄」という童話にかかれたように、廃工場に吊るされた恰好で……
帯に「第一部で読むのをやめないでください」と書かれているように、物語は二部構成。事件そのものは2つなのだけど、それを上手く絡めて長編に仕上げた、という印象。
第一部は、冒頭に書いたような形で始まる。「小人地獄」 それは、人間の腐った脳から作られる毒薬で、致死量はごく僅か。しかも、死に方は心筋梗塞などとそっくりで薬品のデータなどは残っていない。基本的に無味無臭。致死量を大幅に上回ると苦味を出すが、どういうものか知っているなら問題の無い欠点。そんなものを巡り、被害者・藤田恵子は実は、かつて、それを作っていた研究者の娘。そして、さらに第2の被害者も……。そんな状況の中、三橋は、同じ大学の学生で、これまでにも難事件を解決してきた「名探偵」瀬川みゆきを呼ぶ……。そして、快刀乱麻に事件を解決するが……
小説に限らず『名探偵コナン』とかのような漫画などもそうなのだけど、探偵は移動するとそこで事件が起こる死神だ! みたいな意見がある。これは勿論、ギャグなのだけど、この作品の場合、探偵だから事件を呼んでしまう、というのが現実的にあるとすると……そんなテーマ性で描かれているように感じた。
颯爽と現れ、難事件をあっという間に解決していく。そんな名探偵はかっこいい。そして、憧れの対象になる。ならば……
勿論、そんな探偵の側にだって悩みはある。探偵だからこその悩みが。東野圭吾氏の加賀恭一郎作品とかだと、真実を知ることで次に進むことが出来る、というけど、真実を突きつけられることで……というケースもあるわけだしなぁ……
謎解き、という意味では、そんな凄いトリックとかがあるわけではない。でも、名探偵というものがどういう存在なのか? その辛さ。そういうのが凝縮された一冊だと思う。

No.3993

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