(書評)神の値段

著者;一色さゆり



国内外から圧倒的な人気を誇る現代美術家・川田無名。ただ一人、彼のプライマリーギャラリーを経営する永井唯子を除いて、メディアはおろか、関係者にも姿を見せない人物として知られている。そんな無名が、1959年に描いた大作がギャラリーへと運ばれてきた直後、その唯子が何者かに殺害される。唯子のアシスタントである佐和子は、いきなり屋台骨を失ったギャラリーの業務に追われることになるのだが……
第14回『このミス』大賞、大賞受賞作。
『このミス』大賞の受賞作ではあるのだけど、正直、ミステリ作品としての出来はイマイチな気がする。
物語は先に書いたように、ギャラリーの屋台骨である唯子が殺され、その仕事をどうにか引き継いで……というところで展開する。無名の作品を買いたいという客とのやりとり。本当に作品を手元におきたい、というコレクターなのか? それとも、それを転売することで儲けを狙う人間なのか? 後者だとすると、無名作品の相場を崩されてしまう危険が伴うため、慎重に見極めねばならない。さらには、海外で行われるオークションへ出品するための準備……。そういう日常が中心。
そして、その業務を行う中で気になるのは、やはり、唯子を殺した犯人と、連絡のつかない無名の存在。唯一の窓口が消えたことで、連絡すらつかない無名。過去の履歴を追って、その居所を捜そうにも、もう何年も前にいたらしい、というだけで手がかりなし。そのような中で、浮かぶのは、唯子を殺したのは無名ではないのか? いや、そもそも無名という人間は、この世に存在していないのではないか? という疑念。この辺りは、物語を引っ張る道具として上手く機能していると思う。
ただ……物語終盤。どこまでいっても真相が明らかになる気配が無く、そして、残り数頁というところで、いきなり真犯人を浮かび上がらせるヒントが佐和子に渡されて……というのはあまりにも出来すぎ。しかも、そのヒントから犯人を追い詰める手がかりにしても、佐和子なり、警察なりが丹念に調べていればすぐに気付いたはず。無名の居所とかも、「生きている」のであれば、警察すら見つけられないレベルで痕跡を隠せるとは思えないのだが……。その辺りが物凄くお粗末に感じられてしまった。
……と書いていたら、巻末の選評でも同じようなことが書かれていた。

No.3998

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