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(書評)スフィアの死天使 天久鷹央の事件カルテ

著者:知念実希人



外科医を辞め、内科医としての修行を積むために天医会総合病院の門を叩いた小鳥遊優。そこで上司となったのは、空気を読めず、人とのコミュニケーションに難のある少女のような医師・天久鷹央。鷹央の行動に振り回されてばかりのある日、統括診断部にやってきた男性は、「宇宙人に洗脳された」と訴え、目の前で自殺してしまう。さらに、「宇宙人の命令で殺しに来た」という男に、医師が殺される事件が起きて……
刊行順ではシリーズ4作目にあたる本作。ただし、時系列では、ここまでで最も古い瞬間。本作にはナンバリングがされていないのに、その後に刊行されたものに「4」とナンバリングされていることから考えても「番外編」扱いなのだろう。これまでが短編集であるのに対して、本作は長編でもあるし。
と、長々と前置きをしたのだけど、物語は冒頭に書いたように、鷹央と小鳥遊の出会いから始まり、「宇宙人」を巡っての事件が立て続けに2つ起こる。そして、その事件で殺害された医師が「宇宙人との交信」を売りにする宗教団体と揉めていた、ということで、鷹央と小鳥遊は、その宗教団体の調査を……と続いていく。
閉鎖的とは言え、農業などを基礎とした自給自足のコミュニティを築いている団体。そして、そこでは確かに、神秘体験と言えるものを小鳥遊は体験する。しかし、その団体の実質的経営者は、黒い噂のある(元)医師。そして、違法薬物の疑惑。しかし、警察の強制捜査でも、それは発見されない。本当に薬物の影響なのか? そして、殺された医師が教団ともめる原因となった行方不明の娘はどこに行ったのか?
正直なところ、個々の真相については小粒かな? わかりやすいかな? という感じがする。まぁ、ヒントとなる部分を丁寧に伏線として描いているからこそ、素人にも想像がつくのかもしれないが。そして、それと同じように気になったのが、宗教団体の話で積み残した部分の処理。こちらの部分、医療を巡る社会問題ではあるのだけど、それだけで一本の作品が描けるようなテーマなだけにどういもとってつけたような印象が残る。また、宗教団体の話とあまりリンクがない、というのも……
と、ネガティヴなことを書いてしまったのだけど、テンポの良さ、キャラクターのやりとりの楽しさなど面白く読めたのは事実。その上で、期待値が高すぎて、そういうところが気になるのだと思う。

No.4000

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