(書評)たまらなくグッドバイ

著者:大津光央



28年前の春季キャンプの最中、自ら命を絶った伝説のアンダースロー投手、K・M。四半世紀の時を経て、行方不明となっていた1500奪三振の記念ボールが発見されたことから、彼の再評価が始まった。作家・芹澤真一郎は、彼の伝記を書くべく取材を続けるが、彼のエピソードにはいくつもの謎があった……
第14回『このミス』大賞、優秀賞受賞作。
うーん……なんか、読みづらかった、というのがまず最初に来たりする。
伝説の投手、K・Mについて調べる中でいくつもあるエピソード。『誤審』、『乱闘』、『自殺』、『2つある記念ボール』、そして『八百長』。それぞれのエピソードについて、その関係者のインタビューと、そして、そうではないパートという2つのパートを繰り返す形で綴られる。一応、連作短編みたいな形式と言っていいと思う。
で、例えば、『誤審』なのだけど、日本シリーズの試合終盤。相手打者が打ったボールは、一塁手のミットを僅かに掠めてファールゾーンへ。それは、ヒットと同じ。しかし、審判はファールと判断した。相手監督は怒り、長い抗議へ。しかし、監督は突如、抗議をやめ試合へ復帰。そして、日本シリーズは思わぬ形でKのチームが勝つのだが、直後に相手監督は何も語らずに辞任してしまう……
それを含めて八百長では? とかそういう疑惑と繋がるのだけど、でも、その中に、実はKの誰かを思っての言葉があった……というような形で話が終わる。器用と言えば器用だけど、言葉などがなく、故に誤解もされやすい。その意味では不器用とも言えるKの人間性が見えてくる。その面白さがあるのは確か。
ただ……そうは言いつつ、はっきりと明言される、というよりは、「恐らくこうだったのだろう」という示唆なので、そもそもがそれほど真相が分かってスッキリというタイプの話ではない、というのがまず1つ。それから、K・Mの伝記ということになっているのだが、取材をした芹澤は本になる前に死去し、「私」が書いたと明記されている。しかし、「私」は何者なのか? さらに、インタビューと並行して綴られるエピソードが誰のエピソードなのかよくわからないというモヤモヤ感。それが重なりに重なって、どこに向かっているのか分からない気持ち悪さになっている。一番最後に「私」の正体は明らかにされるものの、自殺の真相とかも「こうだろう」で済んでしまっているし……
勿論、これが本作の「味」と評価するのもアリだと思う。しかし、私は気持ち悪さ、読みづらさ、として捉えてしまった。

No.4002

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