(書評)無法の弁護人 法廷のペテン師

著者:師走トオル



理想に燃えて弁護士になった本多信繁。しかし、初めての裁判では全く良いところなし。無実を訴える被告人が、このままでは……。やむを得ず、彼が協力を求めたのは、阿武隈という弁護士。「他人の嘘を見破ることが出来る」と嘯き、「悪魔の弁護人」とも言われる男だった……
正直、文庫の紹介文とかを見たときは、「嘘を見破れる」なんて辺りから、もっと異能の力とかがあって……というようなものを想定したのだけど、結構、普通の法廷モノだった。相手を動揺させ、そのときに……みたいなものは、超能力ってほどでもないからなぁ。
ということで、物語は、冒頭に書いたような形で始まる。依頼人の女性は、かつて素行が悪く、車上荒らしの前科もある女性。現在も茶髪にピアスという恰好をしている。しかし、決して犯罪はやっていない。ところが、被害者はその女性が犯人と証言し、アパートのベランダには奪われた宝石のケースが……。そんな事件を、たちどころに逆転させてしまう。
被告人の女性は、後日、結婚するとして恋人と共に本多のもとを訪れるが、今度はその恋人が殺人の容疑で逮捕されてしまい……。というところからが本番。
とにかく、テンポの良さとキャラクターが活きていた。良くも悪くも素直でまっすぐな本多と、普段は滅茶苦茶だし、裁判でも無茶をするものの、しかし、周囲の空気を変える術に長けた阿武隈。会話文中心なのだけど、状況はしっかりと理解できるのは流石と言ったところだろう。
その上で、ミステリ作品を読み慣れていると却って忘れがちになるのだけど、刑事裁判で弁護人が行うのは、被告人の弁護であって、犯人の特定ではないんだよね。ある意味、印象論を植え付けるとか、そういうところをメインにした、というのは新鮮。まぁ、殺人の方の裁判で阿武隈が提示した真相(?)にも、色々と疑問点があるのだけど、その辺りで上手くごまかせている……かな?
それと、阿武隈が起訴取り消しの決め手とした行動。これは、確かに本多じゃなくても怒ること。ただ、阿武隈が言うように、故意かどうかはともかくとしても、自白の強要から……というような取調べなどがあり、それが赦されるのに? というのはある。勿論、だからと言って同じ土俵にのっていい丘、って話ではあるのだけど。
そんな社会問題に切り込んだ、とか、そういうタイプの話ではない。でも、単純に娯楽として楽しむには良い作品。

No.4011

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0