(書評)ムーンナイト・ダイバー

著者:天童荒太



ダイビングインストラクターである舟作は、ある秘密の仕事をしている。それは、亡き父の友人であった文平と共に、東日本大震災による立ち入り禁止海域に潜り、震災によって海底へ沈んだ荷物を引き上げること。仮にオモチャであったとしても、宝飾品などのような金銭的価値のある品には手をつけず、あくまでも依頼人グループの思い出の品を持ち帰るのみ。そんな中、そのグループとの約束を破り、彼にコンタクトを取ってきた女性が現れ……
うーん……どういう風に感想を書けば良いのだろう? 先日読んだ前作『歓喜の仔』は、分量の多さ、起伏のなさなどに大苦戦したのだけど、それと比べると状況とか、そういうのにも共感しやすく読みやすかったのだけど……それでも、平板な感じはするし……
ともかく、冒頭に書いたように舟作は密かに禁止海域で荷物を引き上げる仕事をしている。必要経費は貰うものの、実質的にそれで儲かるわけではなく、しかも、違法行為というリスクまで背負って。そんな彼を動かすものは、震災により、両親、そして、兄を喪った、という想い。そして、同じように大切な人を喪った人への想い。
そんな中で、舟作に接近した女性・透子が依頼したのは「行方不明になっている主人の指輪を捜さないで欲しい」というもの。それは、発見してしまえば、夫の死を認めざるを得なくなるから。しかし、その言葉は返って舟作の興味をかきたててしまう。一方で、透子に思いを寄せる男性がおり、震災から5年というのを区切りにしないか、と提案している……
「真実を知ることで、先に進むことが出来る」 これは、『新参者』(東野圭吾著)に出てくる台詞だけど、透子の場合、逆に先に進みたくない、進まないことを選びたい、という意識が常に残る。これもまた、人間の心理として自然なんじゃないかと思う。ただ、それが良いのかどうかは別の問題であり、舟作とすれば、ある意味、その問いを全て投げかけられた形。そして……
一方で、舟作の、透子を見ての反応。妻が子供を産み、母となり、そして、震災で両親、兄を喪って……。異性に対する想いなどが封印されていたのが、透子の登場で……。結構、下世話ちゃあ下世話。でも、こういうのも絶対あるだろう。そして、先に書いた『歓喜の仔』のテーマである「人間は滅びない」っていう部分にも繋がっているのかな? と思う。
前作もそうなのだけど、物語の起伏とかと言うよりも、読者がそこから何を感じるのか? を問われている気がする。

No.4018

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