(書評)アルジャン・カレール 革命の英雄、或いは女王の菓子職人

著者:野村美月






革命とその後の混乱を経て、平和を取り戻したフロリア。その王都パリゼの隅で劇作家のオーギュストは小さな菓子屋を発見する。無愛想な銀髪の店主が切り盛りするその店だが、その菓子の味は絶品で……。そんな店主・アルジャンは、かつて、フロリアの元帥・バルトレオンの片腕、「将軍の銀の猟犬」と呼ばれた動乱の英雄だった……
ラノベレーベルでは珍しい上下巻組で同時刊行という形で発表された本作。1巻ずつ感想を書いていっても良いのだけど、まとめて感想を書いてしまおうと思う。
「ヒストリカル・ファンタジー」と帯には書かれているのだけど、動乱とか、そういうのを感じさせるのは、上下巻ともに終盤のエピソードのみで、普段はどちらかと言うと、劇作家・オーギュストの目を通したアルジャンの店の出来事、と言った趣。アルジャンの作る菓子に惚れ、しかし、無愛想でオーギュストを鬱陶しがるアルジャン。そんなアルジャンは、実は良い人だと語る、店の接客係であるニノンとのやりとり。修道院への寄付を巡っての騒動だったり……と大半は日常の出来事で綴られていく。ただし、オーギュストには見えていない、アルジャンと、フロリアの女王・ロクサーヌの絆があったり……とオーギュストは完全に道化まわしとなっているわけだけど。
貧しい家に生まれた中、その人生に光を与えてくれたのが菓子。しかし、職人へ、などというのは夢の又夢。生きるために出来たのは兵士となるのみ。そして、そんな兵士となったとき、出会ったのが革命によって王族の座を失ったロクサーヌ。贅沢が大好き、という彼女は、「無駄が許される社会」を作るため、更なる革命を目指す。勿論、そこにはアルジャンの「菓子」も……
戦とか、そういう部分の描写は殆どないのだけど、剣呑とした雰囲気も持つアルジャンの現在の姿がある程度描かれた上巻の最後に、革命での出会いが描かれる。そして、宮廷との関係も描かれた上での、外交戦、交渉という戦場での菓子……という構成が上手いことはまっているな、と感じた。基本的には、著者のどちらかと言うと「のほほん」とした雰囲気の作風ながら、しっかりと締めている、と感じただけに。
物語の舞台としては、フランス革命後~ナポレオン戦争辺りの時代をモデルにしていると思うのだけど(バルトレオン将軍って、思い切りナポレオンっぽいし)、当時の戦争って、あくまでも貴族と、その部下がという感じで庶民はあまり関係ない状態だったわけで、その意味でも、オーギュストののほほんさっていうのも許されるのかな? と感じる。
あとがきで著者は、主人公のアルジャンと書いていたのだけど、上巻時点では「?」だった。下巻でも多くは、オーギュスト視点。でも、エピローグまで読むと、アルジャンとロクサーヌの甘い、というか、固い、というか、そんな関係の物語だったのだな、と感じられた。

No.4020&4021

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