(書評)この雨が上がる頃

著者:大門剛明



週末の夜、レンタルビデオ店へ赴いた沙織は、そこで立て籠もり事件に巻き込まれてしまう。女性客を人質に取り、何かを要求している犯人の目的とは……(『この雨が上がる頃』)
など、「雨」を題材にした7編を収録した短編集。
著者というと、司法を題材にした作品が多く、上に書いた表題作でも、沙織は法律事務所に勤めている、という設定がある。表題作ではそれなりの意味を持っているけど、なくても十分に通用する話が多い感じがする。そして、ひっくり返しに主眼を置いているのだけど、ちょっと強引と感じるものもいくつか……
例えば表題作。先に書いたように、夜のレンタルビデオ店で立て籠もり事件が発生。沙織は死角にいて、犯人に気付かれなかったのだが、当然、出て行くことは出来ない。そして、影で犯人の様子を見ているうちに犯人に同情して……でのひっくり返し。ある意味、正義感の強さ、みたいなものがあるのかも知れないけど、明らかに犯罪行為をしている相手にそこまで同情できるか、というと……。しかも、何気に後付っぽい真相を感じるし。
誕生日、クラス一の美少女・妃菜から呼び出しの手紙を貰った修斗。ところが、待ち合わせの場所に妃菜は現れない。そして、彼女を誘拐した、という電話が……(『雨の日のバースデー』) イジメられているものの、家は金持ちで恵まれた環境と言える修斗が、という辺りは著者らしいテーマの取り方。ただ……最後に明かされる真相にはどうしても強引さを覚えずにはいられない。また、『プロポーズは雨の日に』は、露骨な伏線と登場人物の少なさ、そして、ひっくり返しに拘る、という辺りから予想できてしまった……
何と言うか、短編それぞれの出来が悪いとは思わない。でも、ひっくり返しに拘る、と言う辺りの制約ゆえに、パターン化され、予想できてしまう、という悪循環になってしまっている感じがする。色々な話が収録された短編集にこの中の1編が、であれば、スパイスとして印象に残っただろうなぁ……と思えてならない。

No.4024

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