(書評)ラストボール

著者:川中大樹



神奈川県屈指の高校野球強豪校の中軸打者として活躍した経歴を持つスポーツライター・島野。彼は、「地方大会の名勝負」という企画に、自らも出場した試合を選び、取材も兼ねて若くして事故死したライバル校・常栄学館の捕手・中尾の13回忌法要へ参加する。当時の思い出話に花が咲き、そして、中尾の両親から、彼の残した日記と戦術ノートを預かる。しかし、帰宅途中、島野はそれを何者かに奪われてしまう……
久しぶりに、こういう内情暴露的要素を多く含んだミステリ作品を読んだような気がする。
冒頭にも書いたように、取材をしている最中に戦術ノート、日記を奪われる、というところからスタート。元々、島野のライバル校である常栄学館のエース・紀田には二軸スライダーという「魔球」ともいえるような武器があった。しかし、甲子園決勝で彼は打たれて敗れ、プロでその魔球は封印されてしまった。そして、その決勝について「打たれるべくして打たれた」というトップ屋も……
「魔球」は一体何だったのか? 確かに、そのトップ屋が言ったように、決勝で紀田が打たれたときには一定の法則性があった。また、奪われた日記には謎の走り書き。本当に、紀田と中尾は不正をしていたのか? さらに、そう考えると中尾の死は、本当に不幸な事故でよかったのか……?
正直なところ、テーマとしてはかなり地味。けれども、当時の様子についての聞き込み。そして、交友関係。その後の進路……。そういうものを積み重ねていくことによりジワジワと確信させていく、という流れはなかなか読ませる。正直、主人公・島野と同様、読んでいる自分も終盤には不正をしていたのは間違いないだろう、と思えたもの。
……ただ……そこまで「不正をしていたのだろう」という確信はしても、証拠がないままに当事者を呼んで効いたら「その通りです」という展開はちょっとなぁ……(苦笑) 確かに、データなどから見ても不自然と言えるんだろうけど、「偶然だ」と突っぱねればそれで終わりな程度でしかない。逆に、プロに入って封印した、となればデータを遡って調べて……みたいな人間がなぜでなかったのか? という気もする。
ある意味、そういうところも含めて「すがすがしさ」と言う形にしたのかもしれないけど、好みは分かれるかもしれない。

No.4036

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