(書評)創薬探偵から祝福を

著者:喜多喜久



中堅製薬会社のMRである千佳は、それとは別にある仕事をしていた。それは、主治医からの依頼に基づいて、病のメカニズムを解明し、対応する新薬を作る、という仕事である。調査担当の千佳、そして、化学合成担当の遠藤は、数々の難題をクリアし、やがて、ある女性を救おうとしているのだったが……
新潮文庫nexレーベルの作品でも、ある特殊な知識を持つ探偵がいて、謎を解く、というのは多くある。『蝶が舞ったら、謎のち晴れ』(伊与原新著)とか、『天久鷹央の推理カルテ』シリーズ(知念実希人著)などなど……。ただ、それらは、その専門知識を使って犯罪などの謎を解く、というものなのに対し、本作の場合は犯罪などは登場しない。ただ、病の人間を見て、その人が何の病なのか? そして、どうすれば治療できるのか? というのを解くというところに集約されている。
例えば1編目。依頼されたのは、エボラ出血熱のような症状が出ている青年の治療。エボラ出血熱が流行っている国への渡航暦があるが、しかし、検査の結果は陰性。そしてその青年が過ごしていた村では、ある草で作った人形が魔よけとして珍重されていた……。そんな中から、病の原因は何なのか? どう合成することにより有効なものになるのか? トライアンドエラーでそこへ挑んでいく。
何と言うか……感想をどう書けば難しい。専門用語とかは当然に使われているのだけど、でも、何をやっているのか、というのは理解できる。しかし、そもそも専門知識がない私のような人間には、「こうすれば」と予想することは不可能という形になってしまう。まぁ、あとがきで、「創薬とはどういう仕事なのか説明することは出来たと思う」というように、どういう世界なのかは理解することが出来た。
そして、そんな主人公二人の目的は、遠藤の恋人であり、千佳の姉を救うこと。それは、二人もかつて参加していた創薬チームが開発した新薬の副作用で意識不明の状態に。救うためには、かつての仲間との協力も必要だという千佳と、あくまでも自分が、と意固地になる遠藤の間に溝も出来ていき……。副作用の問題とか、そういうのも当然に出るはずだし、そのようなケースでの人間関係と言うのもあるだろう。その辺りも興味深く読むことが出来た。
ただ……1巻でまとめるためか、ちょっと終盤がゴチャゴチャした感じがする。もうちょっとその部分は丁寧に描いて欲しかったかな? と感じる。

No.4037

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