(書評)倒叙の四季 破られたトリック

著者:深水黎一郎



懲戒免職となった敏腕刑事が作成したという「完全犯罪完全指南」というファイル。それを元に完全犯罪を目論む4人の殺人者。そんな犯人達に挑むは、警視庁捜査一課の刑事・海埜。彼らは、一体、どんなミスを犯したのか?
と、タイトルのように倒叙形式で描かれる連作短編集。これまたタイトルの通り、4編(+α)を収録。
何と言うか……かなり無駄を省いたというか、必要最小限の情報だけで綴った感がある。何しろ、上下2段組とは言え、200頁弱ほどの分量。無駄のない構成にならざるを得ない。それだけに、色々とヒントがわかりやすいかな? と感じるところはあった。
首吊りを偽装した『春は縊殺』。首吊りと扼殺では、その結果が異なる、ということ学び、それを実行した犯人。遊びのはずの女性を殺害した犯人だったが、思わぬ落とし穴が……。正直なところ、この証拠は、かなり後付けっぽい気がする。まぁ、だからこその思わぬ落とし穴、なのだろうけど。
友人を溺死に見せかけた『夏は溺殺』。これは、無駄のなさが分かりやすさに繋がってしまった気がする。結構、分かりやすく実行の際の行動が出ているだけに、「ここかな?」というのが見えたので。ただ、収録されている作品の中で、一番、完全犯罪に近かったように感じる。運がなかった、ってことかな?
個人的に好きなのは4編目、『冬は氷密室で中毒殺』。密室状態にし、煉炭自殺に見せかけて殺害した事件。痕跡は消し去り、密室状態も作り上げた。そして、指紋など、自殺と見せかけるための工作もしっかりと出来た……はずだった……。トリックは大掛かりで、かつ、緻密。しかし、念には念を入れたが故に出てしまった瑕疵。そして、密室を作り上げたが故に、という皮肉な結末は印象的。
その上で、エピローグでもう1つ、物語の真相が語られるのだけど……これについては語らない(笑) この辺りも含めて著者らしい、というのはわかる。

No.4039

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