(書評)ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月

著者:櫛木理宇



暦は春ながら、まだまだ雪深い雪大の春休み。そんな中、森司は来るホワイトデイのことで気もそぞろ。ただし、その理由は、通常とは逆の、こよみからのお返しについて。しかし、そんなこと関係なく、オカルト研には依頼が……
シリーズ第9作。
前作で、副部長である三田村先輩が卒業し(ただし、OGとして今回も出てくるけど)、新入部員が登場したりとか人間関係の変化などもある巻。今回は、ホラーとしても色々と捻りのある話が多かったように思う。
1編目『意気地なしの死神』。SNSのオフ会に参加した女子大生。しかし、友人は、そんな彼女がホテルで自殺するという予知を見てしまう。果たして、彼女はそんなつもりはなかったのにホテルへと行ってしまって……
その犯人とも言うべき霊の存在。それ自体も嫌なのだけど、それ以上にそのきっかけとなった人間の行動。確かに、大学生くらいになると、そういうこともあるだろう、とは言えるのだけど……ここまで開き直られると、というのはある。
怖さ、という観点では、2編目『金の帯 銀の帯』。12年前に亡くなった母の形見の人形を手に入れた女性。ところが、どうも、その人形が動いているように思えてならない。そして、調べると母には年子の姉妹がいて……
幼いころは問題児であった母と、大人しかった伯母。そんな母を心配した祖母は、2体でセットの人形を姉妹へ渡した。やがて、母の問題行動は収まり、2体の人形は実質的に母のものになったのだが、母が結婚する際に……。人形って、人の疫とか、業とかを背負ったり、とか、はたまた、身代わりになったり、とか、そういうことは言えるけど、その処理によって……。最後の展開も意外で、どう転ぶかわからない流れが怖かった。
逆に3編目『月のもとにて』は、暖かい感じの読後感。
森司が行うことになったのはアパート探しの手伝い。そこに現れたのは、森司と同じく「視える」という鈴木という後輩。ところが、彼は「視える」にも関わらず、霊が大量にいる部屋へ越そう、ちう。その理由は……
前のエピソードとは逆に、霊との付き合いがプラスに変わった鈴木。そして、そんな救ってくれた霊への未練があるから……。まぁ、下手をすると泥沼にはまり込みそうな気はするのだけど、暖かいところで抑える辺りがバランス感覚なのだろう。
そして、最後の4編目『籠の中の鳥は』。あるときを境に同じ夢ばかり見る、という学生。そこに出るのは、冤罪ではないかといわれながら獄中死した男と、獄中結婚した女性。男が、というのならばわかる。しかし、なぜ、女性が?
戦後初期のころの、取調べ。さらに、それと同じように劣悪あったさまざまな施設の実情。それが絡み合った結果の悲劇。前作(8巻目)は、長編でちょっと長く感じられた、と書いたのだけど、このエピソードに関しては、色々とな要素があって、長編でもできるような話のように感じられた。前提そのものが崩される面白さとか、そういうのも含めて読み応えあり。
と、全4編、それぞれ趣があって満足感たっぷり。森司とこよみの関係も最終的に進展したし、そういう意味でも見所がある、といえそう。……っていうか、お前ら、何年越しだよ!!

No.4040

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0