(書評)大正箱娘 見習い記者と謎解き姫

著者:紅玉いづき



新米記者である英田紺のもとに届いた一通の手紙。それは、旧家の蔵で発見された「呪いの箱」を処分して欲しい、というもの。その呪いの解明のため、紺は神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館へ赴く。その館に住む少女・うららは言う。「うちに開けられぬ箱もありませんし、閉じれぬ箱もありませぬ」……
一応、連作短編の形になっているのだけど、メッセージ性というか、テーマ性というか、そういうのが一貫しており、その上で「大正」という時代が上手く機能しているな、と感じる。
大正時代というと、明治からさらに時が経ち、大正デモクラシーなど、民主主義への運動が盛んになってきた時期。その中には、作中にも名前が挙がる平塚らいてうのような女性の権利を、という人物もいる。しかし、その一方で、明治維新後の華族制度などが残るどころか、経済発展の中で、むしろジェンダー的な役割の意味が強く強調される面もあった時代でもある。その時代性が物語を通じて強く描かれているように思えてならない。
例えば、冒頭にも書いた1編目。旧家の家へと嫁いだ女性・スミ。しかし、呪いの箱のせいで、夫を喪ってしまった。しかし、その箱の中に入っていたのは……。残されたのはスミの素朴な願い。そして、その願いをかなえようとした夫。けれども「家」という制度がそれを許さず……
3編目にしてもそう。自殺した妹は、姉の婚約者の子爵に手紙を出し続けていた。その手紙に綴られていたのは……。こちらもある意味、ささやかな願いに過ぎない。しかし、女性である、とか、お家のため、と言ったものは、そのような願いを許さない。そして、再びスミが登場する4編目で紺が突きつけられる現実……
(書きづらいので続編ではネタバレするつもりだけど)紺自身が抱えた秘密、過去。そういうものも含めて、テーマ性が非常に強く出ていたように感じる。と、同時に、うららについての謎は色々と膨らんで……。色々と思わせぶりなところかも多くあるだけに、続編にも期待したいところ。

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COMMENT 2

苗坊  2016, 06. 10 [Fri] 23:16

こんばんは^^
確かに大正時代の背景と登場する女性たちの境遇がぴたりと合った作品でしたね~。
紺が関わることになった女性たちの想いは読んでいて切なくなりました。
うららの事は謎に包まれたままでしたよね。
続編をぜひ書いていただいて、うららの事ももっと知りたいです。

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たこやき  2016, 06. 29 [Wed] 01:29

苗坊さんへ

明らかに、続編を前提とした結末ですよね。

でも、この巻だけでも作品の世界観、テーマそういうものがしっかりと描かれていて面白かったです。

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