(書評)放課後スプリング・トレイン

著者:吉野泉



4月のある日、泉は親友である朝名から年上の彼氏である上原先生を紹介される。そして、そんな彼の友人である大学院生・飛木とも知り合う。そんな飛木は、泉の周囲で起きる事件の真相を次々と解き明かしてみせる不思議な人で……
第23回鮎川哲也賞最終候補作を改稿して綴られた作品。全4編の連作短編。
そんな出自からも明らかなように、形としてはミステリ小説ではある。それも、日常の謎、の系列に入るような。ただ、それぞれのエピソードにおいて謎の登場そのものが遅く、しかも、かなり小粒な印象。ということで、形だけ借りて、謎解きをした青春モノ、女子高生の日常を切り取ったもの、という印象。
例えば1編目。冒頭に書いたように、主人公の泉が、上原先生、飛木と知り合う話。その途中、奇妙な女性に出会う。目を開けて、普通に座っているがしかし、降りる駅になっても座ったままで挟まったスカートを抜き出すのを妨害してしまう。嫌がらせ? とも思ったが、しばらくして、彼女は、泉に謝罪してきた? では?
まぁ、謎としては面白そうな気もするのだけど、飛木が出す解答は殆ど憶測のようなもの……。しかも、正直、それほど以外と言うわけでもなくて……という感じ。他のなぞについて、そういう感じなのである。
ただ、その途中で出てくる部分こそがこの作品の魅力なのかな? と感じる。
先の1編目であれば、朝名の恋人を紹介してもらえる、ということで浮き足立つ様子。2編目の文化祭の描写でも、ある意味のグダグダと、その中での何となくの盛り上がり方。自分の経験というのが大きいのだけど、この辺りの描写って、凄くリアリティがある。そういうところこそが評価されたのだろう、というのを凄く感じた。
物語としては、4編目で、ある仕掛けが施されたことが判明する。確かに驚いた。驚いたけど……でも、だから何? という感じでもある(笑) ある意味、そんな感覚って新鮮かもしれない(笑)
一応、個人的な好みから言えば、謎がもうちょっと魅力的になれば文句なしなんだけど……という感じではある。

No.4046

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